悩める電脳仔羊 a cybersheep in trouble
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夜光花 『薔薇の奪還』 大洋図書 2011年 … 薔薇の不思議のダンジョン
- Posted at 2011.11.28
- l夜光 花
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不死者の血を引く者として、薔薇騎士でありながら薔薇騎士団から追われる身となった啓。ずっと啓を見守ってきた守護者であるレヴィンは啓の血によって死にも似た眠りにつき、もうひとりの守護者であるラウルは啓を救うために、宿敵アダムの手に落ちていた。誰が本当の味方なのかさえわからないなか、ふたりの守護者を想い、ときに孤独に囚われる啓だったが…薔薇騎士と守護者、離れることのできない運命が再び動き始める。
厳しい試練を乗り越え、亡き父の後を継ぎ薔薇騎士となった主人公・啓が、自身に課された宿命や守護者からの熱烈な求愛に翻弄されながらも、不死者らを倒すべく壮絶な死闘を繰り広げていくアーバン・ダークファンタジー第4巻。
アダムに囚われてしまったラウル、啓の血を飲んだことで謎の長き眠りについてしまったレヴィン――ふたりの《守護者》だけでなく、薔薇騎士である啓までもが薔薇騎士団の前から消えて3年が経過。薔薇騎士の資格すらないルイスが汚い手を使って総帥の座につき、歯向かう薔薇騎士団メンバーを次々と粛清していた…と、第4巻は暗めに幕が上がる。
だが暗いままで話が進行することはなく、啓が3年の間送って来た修行の日々は厳しいながらも、肉親の絆を感じさせるエピソードが含まれていたし、啓はいつも前向きで一生懸命、アデラばーちゃんとのやりとりはほほ笑ましくすらあり、未来は暗くない、希望はあるのだ感じさせてくれる。でも啓をめぐる現状は厳しいまま。緩急のある展開は相変わらず素晴らしく、とくにこの第4巻ではクロフォード家のある程度の謎が明かされ、母・マリアが本格的に登場し、薔薇シリーズでも変わらない夜光節が効きまくった女性(マリア)の激しい愛憎ぶりに感服した。
個人的に面白く感じたのは、啓の修行の3年間の話だった。アダムと戦うために啓は力をつけなければならない。アデラから云い渡されたその修行の場は、試練の間、幻想の間、幽玄の間。地図はなく暗闇、赤子のようなモンスターが現れ、なかなか前に進めない。気を失うと外に放り出されて一からやり直し。相棒のサンダーとともに毎日もぐって悪戦苦闘の日々、ようやく道具の使い方がわかってダンジョンクリアの光明を見出す――という啓の修行ぶりは、不思議のダンジョンに挑む「風来のシレン」そのもの。今まで夜光さんの作品を「ゲームっぽい」と評してきたが、まさか「風来のシレン」になるとは思ってなかった。最終ダンジョンクリアに3年かかった私は、啓に思わず共感。試練の間をクリアしたときは、「ようやった!GJ!」と叫びそうになった。
とまあ、暗いわりには楽しいエピソードが多いのだが、レヴィンの目覚めに都合のよさを少し感じるし、助け出したラウルがマトモになるのも早急すぎだと思う。ただこれ以上延ばしてもダラダラするだけ、ふたりが復活しないと話にならないので、それでいいのかなと思えた。《守護者》以外の脇役たちもそれぞれにちゃんと活躍、あれだけ大勢出てくるのにみなキャラ立ちしているせいか、読んでいて「あれ?この人だれだったっけ?」ということがほとんどない。これは素晴らしいことだと思う。
ラブの面では、竹内まりや状態が続くも――夜光作品ならいつか出てくるだろうと予想した3人ご一緒場面がついに(満を持して)登場。3年の間に薔薇騎士として強くなった啓だが、そっち面での成長はほとんど見られず、あえぎっぱなし。ただ毎回気持ちよさそうなので、どんなにすごいエロを書いても夜光作品にはラブがあるなあと感じる。
アダムとの闘いはどう決着がつくのか。薔薇騎士と《守護者》とのラブの行方は?…薔薇の大風呂敷はどんどん広かっていく。第5巻が楽しみである。
評価:★★★★(どちらかを選ぶのではなく、啓にはこのままふたりと添い遂げて欲しいなあ)
「青年期スタート」というわりには啓は子どもっぽく、あんまり成長が感じられない…けど、ま、いっか。
奈良画伯の絵。ますます騙し絵化が進み、境界線がよくわからない。昨年から顔の描写に人間味がなくなってきて、個人的に思いはフクザツなんだけど、異形の者が出てくる薔薇シリーズはそのほうがいいのかもしれない。ただ5巻が出る頃にはまた変わってそうだなあ…。むう。
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまらない。
★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。
*2011年9月18日に書いた感想を少し修正
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