スポンサーサイト

    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。
    web拍手 by FC2

    夜光花 『忘れないでいてくれ』 幻冬舎 2009年 … 記憶の扉を開ける男

    忘れないでいてくれ (リンクスロマンス)忘れないでいてくれ (リンクスロマンス)
    (2009/09)
    夜光 花 (挿絵:朝南 かつみ)

    商品詳細を見る

    接触で人の記憶を覗き、消去することができる不思議な能力を活かして「記憶消し屋」を営む男・清涼が、ある事件に関わった依頼人の過去を消したことによって、事件を追う刑事・秦野と知り合い、やがて自らの忘れられない過去と対峙、その記憶にケリをつけていく話。主人公は記憶の中の残留思念を読み取る能力を持っているので、一種のサイコメトラーものといえる。

    主人公・清涼は、不思議な能力を活かして胡散臭い商売をしながら好きなように生きている男。人助けをする気はないが、かと云ってやさぐれているほどでもない。ただ警察に協力はムダと考え、仕事はあくまでも自分の生活のためと割り切っている。そうなった理由は、だれもが胡散臭いと思うその不思議な能力と清涼自身のサバサバとした性格によるところが大きいのだが、中学生時代に経験したある惨い事件も影響している。そんな男が、不遜な態度を見せる刑事・秦野と知り合う。だが些細なことで口論となり、秦野の記憶を覗いて惨い過去を暴いたことで、清涼は秦野に無理矢理の乱暴を受ける――とストーリーが続いたのでちょっとイヤかも…と思ったのだが、清涼自身が「他人に知られたくない記憶」を勝手に覗いたことを悪いと認めているし、また秦野の陰惨な過去はたしかに他人には知られたくないものであり、乱暴された清涼よりも彼のほうが精神的ダメージを受けていることが伝わってきたため、こりゃ両者イーブンだなと思えた。そう読み手に思わせたところに、夜光さんの上手さを感じた。ちなみに秦野の陰惨な過去というのが、これまた夜光さんらしいダークさに満ちた内容だったので、「夜光さんってホントそーゆー設定が好きだよなあ」と逆に感心してしまった。

    知り合って身体を重ねてしまった経緯はともあれ、知られたくない過去を見られてしまった男から「俺の過去を消してくれ」ではなく「これも俺の一部だ」と云われた清涼。いままで会った人間だけでなく、自分も持ち合わせていない「過去を受け入れる強さ」を持つ秦野に、清涼が知らず知らずのうちに興味を覚えるのはわかるし、最初は不遜な男として登場した秦野が実は意外と素直ないい奴で、清涼に「実は好みなんだ」とアッサリ告白、清涼は清涼で、嫌悪を感じる前に毒牙を抜かれて絆されてしまうのだから、秦野が嫌いではないのだと伝わってくる。秦野は清涼に完全メロメロ状態を披露、ふたりが身体を重ねるシーンが何度も出てきて、あとは素直じゃない清涼が心身ともに秦野に落ちていくのを待つだけとなる。清涼の「嫌いじゃない」が「好き」に変わっていく姿が描かれていくので、甘い話が好きな人にはオススメできる。

    ただ後半、清涼の過去をめぐる事件のキーパーソンが現れてから展開がやや急になり、火サス調を強く感じた。それが夜光さんの魅力といえば魅力かもしれないし、BLなんだからラブ最重視、清涼の心のドラマは大フィーチャーしなくていいのかもしれない。でもできればもう少し、そのキーパーソンと清涼の決着、そして清涼が自分自身と対峙する姿、それを見守る秦野を描いて欲しかった。夜光さんの作品なのでエロは長め、身体を重ねるシーンが軽く5〜6回は出てくる。その半分を削ってでもそれを描いて、話に厚みを与えて欲しかった。好みの問題かも知れないが。

    あともうひとつ、特記したいことがある。清涼の友人たちがとても魅力的。清涼同様、好き勝手に生きている金持ちの変人でサングラスの下の顔は誰も知らないという塚本、常にヴェールを頭から被っている占い師の黒薔薇(本名はわからない)、特殊な能力を持つという花吹雪(本人は出てこない。話題だけ)。この作品で一番フツーな人物は清涼じゃないかと思わせるほど、彼らは浮世離れしていて、絶妙な謎に包まれていた。あくまでもバイプレイヤー、でも「どういう人たちなんだろう?」と思わせるほどの魅力。話が綺麗に完結しているので清涼と秦野の話に続きは求めないが、彼らのスピンオフが読みたい。ピンで立てる魅力が十分あると思う。

    夜光ミステリー作品の中では、これが個人的ベスト作品。

    @RECOMMEND@
    評価:★★★★★(『忘れないでいてくれ』というタイトルが素晴らしい!絶賛したい!)
    ちょっとちょっと!「占いとケーキセット込みで二千円」って、そりゃ安すぎ!>塚本
    黒薔薇さん、よくそれで引き受けていたなあ…。

    夜光作品にしては珍しく受・攻ともに年齢高めのキャラ、攻はハイスペックではなくごくフツー、話はサイコメトラーもので不思議系なんだけど、人間の強さと弱さが描かれていてヒューマニズムが感じられるせいか、私は今でもこの作品が夜光さんの中で一番好きです。忘れられない。

    ZERO STARS … 論外/問題外作
    ★ … お好きな人はどうぞ。
    ★★ … つまらない。
    ★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
    ★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
    ★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。

    「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
    「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
    性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。
    朝南さんによるカバー絵。白ジャケット姿の清涼を見ていたら「どこのジョン・トラボルタ?」と思ったけど、よくよく見たら、清涼が着ているのは白ジャケットではなく、白衣なんですね。しまったー。
    サタデー・ナイト・フィーバー 製作30周年記念版 デジタル・リマスター版 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]サタデー・ナイト・フィーバー 製作30周年記念版 デジタル・リマスター版 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
    (2008/06/20)
    ジョン・トラボルタカレン・リン・ゴーニイ

    商品詳細を見る

    そして「記憶を消す」で思い出したのが、映画「エターナル・サンシャイン」。
    エターナルサンシャイン DTSスペシャル・エディション [DVD]エターナルサンシャイン DTSスペシャル・エディション [DVD]
    (2006/10/27)
    ジム・キャリーケイト・ウィンスレット

    商品詳細を見る

    恋に終止符を打つため、愛した男との記憶を消す治療を受け、完全にデリートしてしまった女。その彼女をどうしても諦められない男。失恋の話です。ジャケット写真は甘いけどしょっぱい話、ミシェル・ゴンドリーの映画なので、ふだん映画をあまり観ない人/大作映画しか観ない人は、気をつけて。

    *2009年12月5日に書いた感想を加筆修正

    関連記事
    web拍手 by FC2

    Leave a comment

    Private :

    Comments

    -
    1 2 3 4 5 6 7
    8 9 10 11 12 13 14
    15 16 17 18 19 20 21
    22 23 24 25 26 27 28
    29 30 31 - - - -
    09 11
    プロフィール

    秋林 瑞佳

    Author:秋林 瑞佳
    「あきりん・みずか」と読みます。
    (BLCD感想はジョセフィーヌ秋太夫が担当)

    風来のネットサーファーにして、
    ハンパない映画ギーク。
    そしてなにかと悩める電脳仔羊。

    気の向くまま、
    ネット場末で人知れず更新中の、
    BL感想&レビューブログです。

    >>ネタバレ上等<<
    なので、お気をつけ下さーい!

    リンクはご自由にどうぞ♪

    コメント欄にはURLが貼れません。
    (スパム回避のためです…)
    もしURLのご連絡がございましたら、
    お手数をおかけ致しますが
    メールフォームにてご一報下さい。

    ★ご注意★
    ネタバレ回避でテキストを折ることは(ほとんど)ありません。

    オンラインカウンター
    現在の閲覧者数:
    最新記事
    最新コメント
    カテゴリ
    メールフォーム

    名前:
    メール:
    件名:
    本文:

    検索フォーム
    リンク
    QRコード
    QR
    QLOOKアクセス解析
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。