悩める電脳仔羊 a cybersheep in trouble
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夜光花 『堕ちる花』 大洋図書 2008年 … 火サスな兄弟モノ
- Posted at 2011.11.28
- l夜光 花
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兄弟というのはそれほどいけないものだろうか?? 大学生の磯貝誠は、異母兄で人気俳優の尚吾とふたり、故郷である四国を離れ、東京で暮らしている。過保護なくらいに誠を溺愛している尚吾と、弟でありながら兄を守りたいと思っている誠。ふたりはまるで恋人のように仲のいい兄弟だった。そんなある日、誠のもとに幼馴染みからハガキが届く。それがすべての始まりだった…… ずっと押し殺してきた想い。兄弟として越えてはならない一線。故郷に隠された忌わしい秘密とは…!?
いわゆる「兄×弟」な兄弟モノ。書き手は火サス風ストーリーを得意とする夜光花、さらにレーベルは「ジャンル多様でエンタ色高め」のSHYということで、さほど兄弟スキーではない私でもイケるだろう、でも夜光さんならただの兄弟モノでは終わらないだろうな…と思ったら、たしかにその通りの内容だった。
兄弟モノ(兄×弟)としてならば、「血を分けた弟にこんな思いを抱く俺は最低だ、でも悶々して眠れない」という、兄(攻)の「禁忌>欲求(カラダが先)」が、徐々に「欲求>禁忌」へと逆転していくさま、そしてついに体を繋いでしまった兄と弟がずるずると関係を続けてしまうさま――を読み手は期待すると思う。ところがこの作品の場合、一線を越えて後悔する兄に「にーさん、なに悩んでるの?」と弟がハナからユルユル。ハード路線を期待している人には物足りない。ただ甘さと目眩めく愛のエロを期待するならそのほうが痛くないので、結果的に間口は広い設定だと思われる。
「兄と弟のバカップル」と思わせるまで禁忌ハードルを低くしたのは、もうひとつのストーリー「幼なじみたちと故郷をめぐる謎」のサスペンス性を引き立てるためなのかもしれない。
少し残念なのは、そのサスペンス部に火サスの印象がついて回ること。重みなく人がバッタバッタと死んでいくし、次から次へと謎は出てくるがご都合主義な展開で収束していくし、キャラは常に演技しているようで、感情表現は行間よりセリフ先行な印象があり、まるでアドベンチャーゲームをしているよう。ただしそんな火サス展開であっても、安っぽく感じられないのが夜光さんの特長で、他の作家ではこうはいかないと思う。
夜光サスペンスと兄弟スキーにオススメの作品。
評価:★★★☆(タガが外れたあとの兄がスゴイのなんのって)
しっかし、「死のうと思って沼に行ったけど、死ねなかった。いっそあの花の匂いでおかしくなればよかったのにな…」って、にーちゃん!にーちゃん!そのあとまったく歯止めが効かなくなって、ついさっきまで死ぬつもりでいたくせに、「お前の匂いを嗅ぐだけで、**する…」「我慢するなよ、誰も聞いてないって…」とか、人が変わったようにエロなセリフを連発し出したんだから、実は花の匂いがタイムラグに効く体質なんじゃ?
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまらない。
★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。
*2008年10月13日に書いた感想を加筆修正
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