悩める電脳仔羊 a cybersheep in trouble
BL系書籍・ドラマCDの感想/レビューを書いています。人知れず更新中。ネタバレご注意。
成宮ゆり 『恋する回路』 角川書店 2011年 … 道筋不明の恋愛回路
- Posted at 2011.11.23
- l成宮 ゆり
![]() | 恋する回路(角川ルビー文庫) (2011/05/31) 成宮 ゆり 商品詳細を見る |
自由気ままな性格のせいで、真面目な営業マンの西荻から敵視されているデザイナーの田辺。ある日、田辺はWEBサイトに書き込まれた西荻の失恋相談を偶然見つけてしまう。田辺は、匿名で相談に乗るうちに、普段はクールなのにネットでは素直に接してくる西荻のことが可愛く思えるようになっていく。正体を明かさぬまま少しずつ打ち解けていく中、思い切って西荻を温泉旅行へ誘った田辺だが…。自由人デザイナー×真面目な営業マンの甘い恋の駆け引き。
成宮さんの作品を一度読んでみたいと思っていたところ、面白そうなあらすじとファンタジー属性を持つ沖さんがリーマンものに絵付けをしたという珍しさに惹かれ、これはチャンス到来!と大いなる期待を(勝手に)抱いて購入した作品。攻視点一人称。
主人公は契約デザイナー・田辺。契約先の会社にいけ好かない真面目な社員がいても、仕事は仕事だと割り切って、仕事もプライベートも俺流気ままに生きてきた。てもそんなある日、ネットサーフしていた田辺は、ネットの相談箱になかなかセンスのいい回答の書き込みがあるのを発見する。どうやらその書き手は、あのいけ好かない西荻らしい。そんな西荻の意外なネット上の姿を知って以来、田辺はリアルの彼が気になり始め――という、敵愾心が恋心に変わっていく話。
あらすじと本編に一部相違がある。webのQ&Aサイトに西荻が書き込んでいてそれを偶然に田辺が発見、ネット上の彼の素直な書き込みに好感を持つ…までは合っているが、匿名で相談にのっていない。それどころか、仲間に西荻の書き込みを教え、「アイツ、こんなこと書いてるぞー」とみんなで見るようなヤツだった。意外な人が意外な書き込みをしているとまわりに教えたくなるのかもしれないが、好きになっておいてちょっとそれはあんまりじゃないの?
田辺がweb上の西荻とおかしな書き込みのやりとりをして、コメディに持ち込むのかと期待していたのだが、まったくそういう展開にはならなかったし、ただロムしているだけ。書き込みで意外と可愛い奴だと思い、そのギャップに惹かれるのはわかるけど、それがどうリアルの西荻に惹かれていくことに繋がるのか、よくわからない。またそんな攻に受が抱かれるのもわからない。サウナで襲われそうになったところを助けられたから?酒に酔っての勢い?
文章は読みやすい。会社員の日常がリアルでよく書けている。ただ登場人物すべてが話に活かされておらず、田辺と西荻の間を引っかき回してくれるのかと思っていた弟や辰巳が、大して動いてくれなかった。彼らはなんだったんだ?という印象しか残らない。また、たまに表現で「無理してるなあ」と感じられる箇所が見受けられる(どんな無理かと訊かれれば、印象や感覚の話なのでどうにも答えにくいのだが)。結局のところ、私は最後まで上から目線で他者を観察する田辺が気に食わなかったのかもしれない。なんで受はコイツに惚れたのだろう?
どうやら彼らには、彼らにしかわからない恋の回路が組み込まれているらしい。それが理解できた人には、とても面白く感じられるだろう作品。
評価:★★☆(成宮さんファンには申し訳ないけど、この程度の星評価しかつけられない…)
コミック・ノベルどちらにしろ攻視点は当たるとでかいけど、なにかひとつでも外すと読む気が一気に萎えて、共感を阻んでしまう。万年青コーナーのBLチャレンジャーで返り討ちも経験のひとつと考える私ですら、攻視点一人称だと判明した場合、買うかどうかかなり悩む。今回は期待が大きかったのに外してしまったので、落胆は倍率ドン!さらに倍!となってしまった。もちろん、この手の設定やキャラが好きな人にはたまらない作品だと思うので、あんまりネガティブなことは云いたくないけれど――残念なものは残念だ、どうしようもない。
「フツーのリーマンものに沖さんの絵が!」と最初はコラボに期待したのに、よくよく表紙を見てみれば…フツーの会社に勤務する堅気なリーマンの男が、ピンクのシャツに赤ネクタイ、さらに紫のスーツなんて着る?全体のバランスを考えての配色なのはわかる(だから攻を金髪にしたのだろう)、でも綺麗なだけ。お絵かきを見ているよう。つまり沖さんはリーマンBLに向いていないのだと思う。どんなに実力派だろうと、向いてないのならば…それもまたそれでどうしようもない。
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまらない。
★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。
*2011年8月14日に書いた感想を加筆修正