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    木原音瀬 『夜をわたる月の船』 蒼竜社 2009年 … 乗ったら泥船

    夜をわたる月の船 (Holly NOVELS)夜をわたる月の船 (Holly NOVELS)
    (2009/11/20)
    木原 音瀬 (挿絵:日高 ショーコ)

    商品詳細を見る

    ある日河瀬は上司の柴岡に人事異動をたてにセックスを強要された。どうしても企画部に異動したい河瀬は、たった一度寝るだけで自分の望みが叶うならと、嫌々ながらも男の条件を呑んでしまう。しかし、企画部に異動になったのは河瀬ではなかった。河瀬は自分の体を弄んだ柴岡を憎み、殺意を抱く。…それから数年後、河瀬は北海道支社長になった男に再会し…。


    この会社で生きていくならば、上司である柴岡の条件を飲まねばならない、まったく損なわけではないが、やはり嫌でたまらない――それでもこれは取引だとなんとか割り切って挑んだものの、想像以上の嫌悪なセックスにその後のタイミングのまずさが重なり、人としてのモラルが崩壊寸前になるまでダメージを受けた主人公・河瀬。数年後に柴岡と再会してみると、彼は相変わらず理解不能な言動や行動ばかりする男だった。だがいつしかそんな男に、河瀬はずぶずぶと深くのめり込んでしまう――という、死にたがりで自己完結な魔性のオヤジと、そんなオヤジに嵌ってもがいて足掻いてしまう主人公による、終わりのなさそうな恋愛問答モノ。

    吸い込まれるように集中して読んだのだが、柴岡を「なんだこのオッサン?」とは思っても、そんな柴岡を理解できないから嫌だとか、話がつまらないとか、BLとしてどうよとか、そういう気持ちにはなれなくて、「あ〜あ、とんだ魔性のオヤジにつかまっちゃったもんだよ」と、河瀬に同情してしまった。なぜなら、河瀬以外の登場人物の目に映る柴岡は「仕事が出来て頭が良く、常識を持ち合わせている男」、誰も彼の本性を知らないからだ。自分勝手な発言はよく出てくるけど、理解不能な内容でも理路整然としているから切り返せないし、50近い男だから年下の男を上から目線で見るのは仕方がない。こりゃ厄介だ。

    老いることが死への近道だし、自分の髪の白さでそれが実感できる。どうせ死んでいくのだから、掃除をする意味はないし、部屋がゴミに埋もれても構わない。ここに訪れる者はいないのだから。

    あんなひどいことをした男を助けるつもりはなかったのに、なぜか目が離せず、いつの間にか自覚のない恋になっていた。どうにかならないか、そばに行けないかと船に乗ってみたらば泥船で、どんどん沈んでいく。でももう戻れない。

    やたらと死にたがる理由は、最後の最後にある程度判明するけれど、知ったからといってどうだろう?
    人が人を理解したいという気持ちは、もしかして傲慢なことなんじゃないだろうか?
    どんなに体を重ねたって、結婚して家族になったって、私は私、俺は俺。
    死ぬときはひとりで、なにも持っていけない。

    それは究極のヒューマニズムかもしれない。

    柴岡本人は認めたくないだろうが、救済を求めるわずかなシグナルが河瀬に向かって発せられていたから、あのラストになったのかなと思った。ある程度線を引いた上で、柴岡は河瀬を受け入れたような気がする。すったもんだは続くだろうが、未来はあるだろう。

    人間を描いているよなあと、しみじみ思った1本。

    評価:★★★★★(木原作品の感想を初めてマトモに書いたのに、人には薦められない…)
    コノハーラさんって、するどく人間観察してそう。お会いすることがあったら、正直怖い。見透かされそうで。

    ZERO STARS … 論外/問題外作
    ★ … お好きな人はどうぞ。
    ★★ … つまらない。
    ★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
    ★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
    ★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。

    「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
    「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
    性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。

    *2010年1月2日に書いた感想を少しだけ訂正
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    秋林 瑞佳

    Author:秋林 瑞佳
    「あきりん・みずか」と読みます。
    (BLCD感想はジョセフィーヌ秋太夫が担当)

    風来のネットサーファーにして、
    ハンパない映画ギーク。
    そしてなにかと悩める電脳仔羊。

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