悩める電脳仔羊 a cybersheep in trouble
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樹生かなめ 『龍の純情、Dr.の情熱』 講談社 2006年 … 虎の過去と晴信登場
- Posted at 2011.11.12
- l◆「龍&Dr.」スペシャル!
![]() | 龍の純情、Dr.の情熱 (講談社X文庫 ホワイトハート) (2006/02/02) 樹生 かなめ (挿絵:奈良 千春) 商品詳細を見る |
清和の右腕「眞鍋の虎」ことリキの意外な素性が判明し、ヤクザになってしまった弟をどうしても諦めきれないリキ兄・晴臣が登場。氷川ひとりだけでも大変なのに晴信にまで振り回される眞鍋組の面々のドタバタと、リキ兄弟に清和と自分をオーバーラップさせてしまう氷川の複雑な心境などを描いた作品。
眞鍋組のお家騒動とチャイニーズマフィアとの抗争が終結したことで、この巻からようやく新生眞鍋組率いる清和と二代目姐・氷川の「かかあ天下」ラブがスタートし、舎弟たちを巻き込んだ騒動がメインストーリーになりますよ、いよいよ新章がスタートしますよ、となった印象を受ける。WH版の「龍&Dr.」シリーズは、この巻から始まるような気がする。
誰よりも清和と一緒にいる時間が多い参謀のリキだが、物語の主人公が氷川なゆえに組の内情があまり描かれていないため、読み手には参謀と云うより清和のガードという印象が強い。そもそもなぜ彼は清和付き舎弟になったのか?…という話が語られていくのだが、リキをなんとしてでも連れて帰りたい兄・晴信がかなりのクセ者で、出てくるたびに強烈な印象を残していく。氷川は氷川で「清和愛し」から眞鍋組に何度も乗り込んだ過去を持つこと、ヤクザを辞めさせたいとまだ思っていること、そしてもともと性格的に優しいことから、どんなに晴臣がしつこくリキを追ってきても強く拒否できない。世の兄たちが晴信ほど弟愛しな気持ちを持っているかは怪しいが、このあたりの心理描写はかなめさんらしい強調とデフォルメなので、そのまま晴信のしつこさを楽しめばよいと思う。
この巻読んでいて上手いと思ったのは、各エピソードがなにげに伏線として機能していること。ダイアローグを通してサラリと触れられているので、あからさまな伏線とは感じないところが素晴らしい。「あの話があったから、この話が効果的なんだ」と後で気付く。たとえば、女連れ込んだ患者を強制退院させてウンザリした氷川が、今度は第三ビル十階にある病室で女の子に片っ端から手をつけ「退院させろ」とわめいているショウに遭遇する。読み手は「ここでもか」と氷川に共感するだろう。幼い清和の飢えを癒すために母乳の出る女の子になりたいと思った15歳の氷川の話では、その前に母乳について勘違いしていた医者たちの話が語られている。同じ勘違いの話でも、医者たちの話があったからこそ氷川の過去は笑い話ではなく切ない話として印象付く。どれもがサラリと語られているので、嫌味に感じられない。
リキの話の過去、重傷を負ったのにヤンチャぶりを発揮するショウ、なんとしてでも京介を舎弟にしたい清和、ますます「かかあ天下」になっていく氷川、振り回される舎弟たちと眞鍋組の現状を描きつつ――そのままストーリーは、『龍の恋情、Dr.の慕情』へと続く。
評価:★★★☆(清和くん、いったいどれだけ車を持っているの?)
ひとりで堂々とゴムを購入している氷川を見た清和くんが、「次からは誰かに買ってこさせるから、先生は買わなくていい」と云ってたけど(氷川はそれを拒否)…誰に買わすつもりだったの?>清和くん…たしか橘高パパにもらったことあるし、前巻ではリキに買わせようとしていたよね?清和くん、過去に一度も自分で買ったことないでしょう?そりゃ清和くんに命じられたらリキは買うだろうけど…どこで?コンビニやドラッグストア?通販って手もあるか…って、リキが通販?…ありえない。いくらキャラのギャップがシリーズの魅力のひとつでも、こればっかりはさすがにないだろうなあ。となると、信司?花柄だったり、ピンクだったり、レース付きだったりするのを選びそう。しまった、アタシってばゴムひとつでなにいろいろと真剣に考えてるんだろう…。
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまらない。
★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。
*2009年9月3日に書いた感想を大幅改稿
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