悩める電脳仔羊 a cybersheep in trouble
BL系書籍・ドラマCDの感想/レビューを書いています。人知れず更新中。ネタバレご注意。
松尾マアタ 『オールモスト・パラダイス』 心交社 2012年 … ぼくの好きな先生
- Posted at 2012.04.30
- l松尾 マアタ
![]() | オールモスト・パラダイス (ショコラコミックス) (2012/04/26) 松尾 マアタ 商品詳細を見る |
松尾マアタのセカンドコミックス。表題作他、2編収録。
中学生の頃、ちょっと変わった美術の先生がいた。その人柄に惹かれ、自分も課外で絵を描き始めて先生と仲良くなっていったが、やましいことは一切なかったのにそれをよく思わない大人がいて、先生は学校を去って行ってしまった。たった数カ月のことだった、でもその後の自分の人生に大きな影響を与えたあの先生――大学を卒業して仕事についた今でもふと思い出す――主人公の目線で10代の酸っぱい恋心が描かれたのち、大人になってから偶然再会したふたりがごく自然に恋に落ちていくという話で、実はBLでもよくある設定だったりする。
そんなありがちな設定なのに、他と一線を引く出来で秀逸だなあと感じた点は、主人公の先生に対する思いが悶々しずぎず感傷的すぎず詩的すぎずシニカルすぎず…ほどよい甘さと酸っぱさで描かれていたこと、先生が去って行ったのは圧力ではなく先生自身の個人的な決断であって、それに至る理由がとても共感できたこと、偶然の再会に絵が介在したため縁というより運命的なロマンがほのかに感じられたこと、そして主人公を受け入れていく場面がごく自然にスマートに流れていったこと、それらの相乗効果で読み終わってからとても心地よかったこと…だろうか。またこうであって欲しいと願う年下攻の面白さも、充分に備わっていたと思う。
すべての人がそうであるとは限らないが、ふとしたときに心に浮かぶ先生というのは、大なり小なりその後の自分の考え方や将来に影響を与えた存在だった、これからも何かしら作用していくんだろうなあと、読み終わってぼんやりトリップ…というか自分の内面を散策するような気分になった。
表題作の他は、観光の名目で自分探しのためにドイツに来た青年の話、魔術師と狼の少年の話の2編があり、どちらもマンガとしてまたBLとして綺麗にまとまっているので読みやすい。派手さはないが、確かな画力と構成力によって裏打ちされた質の良い作品集。
評価:★★★★(なにげにメガネ盛りの1冊。そしてビバ!学ラン!)
モンデンさんが「キジョーイの人」だったら、松尾さんは「バックの人」か。プリ尻☆
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまらない。
★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。