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    英田サキ 『デコイ 囮鳥/迷鳥』 大洋図書 2008年 … 英田節健在

    デコイ 囮鳥 (SHYノベルズ)デコイ 囮鳥 (SHYノベルズ)
    (2008/08/28)
    英田 サキ

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    ある過去と現在の事件を通して繋がる4人の男たち。
    そんな彼らの絡み縺れていく因縁の愛を、群像的に描いた英田サキの作品。

    まず手放しで褒めたいのは、群像劇としてたいへん素晴らしい作品だということ。

    群像劇はそれぞれのキャラの背景と心理、そして伏線のある相関が書けていないと簡単に崩壊する。もともと英田サキは立ったキャラが何人も書ける作家ではあるが、とくに本作のキャラ相関は(那岐と火野の過去にムリはあるが)上手くできていて隙がない。混乱もない。誰が誰とどう繋がり、そしてそれぞれの過去がそれぞれの現在とどう繋がっていくのか――読み進めていくうちに、張られた伏線と投じられた布石によって見えてくる。なかでも佐藤(仮)と喫茶店マスターの立ち位置が素晴らしく、佐藤(仮)の正体が明かされる『囮鳥』のラストシーンは名シーンといっていい。そして女性キャラも野郎どもの向こうを張っていて、その存在はまったく邪魔にならない。

    ――対して、ラブはどうだろう?

    メインは4人だが、基本視点は那岐と安見のふたり。
    このふたりを関連づけているのが火野なので、彼がこのストーリーのキーパーソンになる。

    那岐視点では――犯した罪に苛まれる男から見た、過去を共有する火野。
    安見視点では――記憶を失って頼るものがない男から見た、敏腕ヒットマン・火野。

    火野はミステリアスな男であり、彼を知るには那岐と安見の視点を介さないとわからない。だがどちらの視点をもってしても、火野がなぜ安見に執着するかわかりづらかった。わかりづらいからダメだとは思わない。なぜなら、安見自身が火野の真実や自分の罪の意識を知っても、彼と未来を共にする決意を(なし崩し的ではあるが)したからである。正直、あまりその未来が明るいとは思えないのだが、互いに必要としてそう決めたのならそれもいいだろう。ただ安見が最後まで火野とともに生きていくのかどうか、気になるところではある。安見が精神的に崩壊または頭部に受けたダメージの後遺症が出たり、あるいは逆に自分に力で立ち直ったら?火野を捨ててしまう可能性がないとはいえない(火野は安見を捨てないだろう)。そのとき、結果的にまたもやひとりになってしまう火野は…どうなるのだろう?…火野×安見に対して、どうやら私はBL的ラブ思考ができないようだ。

    デコイ 迷鳥 (SHYノベルス)デコイ 迷鳥 (SHYノベルス)
    (2008/09/05)
    英田 サキ

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    逆に加賀谷×那岐は、実にわかりやすいBL定番と云えるカップル。加賀谷が私好みの「受に長年悶々愛を強いられてきた攻」なので、「成就できてよかったね、那岐をしあわせにしてやってくれ!」以外、なにも云うことはない。加賀谷は那岐の過去を知ったところで動じない、まるごと受け止めてくれる大人だろう。あれだけ悶々に堪えてきたんだから、もっと我儘云っていいくらいだ。そして加賀谷×那岐が安泰カップルがゆえに火野×安見が「それもありかな」と思えるのだろう。

    群像劇としてよくできている、ラブも書けている――褒めてばかりなのだが、気になるところはある。

    まず、那岐の出した答え「過去のけじめ=**殺し」。身勝手で空虚だと那岐本人も自覚していてその心理描写はよく書けているが、那岐の過去を思えば倫理観から「けじめ」という言葉に少々引っかかりを感じてしまう。

    ラスト近くの佐藤(仮)とマスター対決。緊張感のある駆け引きは素晴らしいし、とくに正体が判明してから「マスター」という呼称が本名(偽名かもしれないが)にすっと変わっていくところは絶妙なのだが、佐藤(仮)の説明が多く、シーン自体が長すぎる。そこまで語らなくていいし、引っ張らなくていい。『デコイ』の中で、なにひとつ清算できなかった男が佐藤(仮)だ。その無念、彼の感じる空虚――ハードボイルドにキメるなら、セリフやシーンも固くしたほうが良かったんじゃないだろうか。ちょっとくどくて、ゆるい。

    どんなに硬派な作品に仕上がっても、やたら愛を誓わせたり、コーヒーを飲む場面がよく出てきたり、受が最中にこっ恥ずかしいこと喋り捲ったり…英田節はこの作品でもやっぱり健在で、いつまでも変わらないでいてくれそうだなと感じた。

    評価:★★★★(何回も読み直したいとまでは思わないけど)
    しっかし…安見が記憶を戻すきっかけがあまりにベタだったので、「え?いまどきコレ?マジで?」と、文章を追っかけていた目が点になってしまった。フツーだったら、絶対死んじゃうって!

    あとそうだな~、さあいよいよ…というところで、加賀谷が「専用のものがない。これで我慢してくれ」と云いながら、戸棚から出して持ってきたのがオリーブオイルでなくてよかったよー、もし出してきたら大笑いしていたと思うもの。ちなみに「専用のものがない」ってことは、つまり「部屋に誰も連れ込んでない」ってことだから、ゲロ吐かれても那岐一筋だった加賀谷はエライ、よ!攻の鏡☆ あ~アタシ好み~♪

    ZERO STARS … 論外/問題外作
    ★ … お好きな人はどうぞ。
    ★★ … つまらない。
    ★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
    ★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
    ★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。

    「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
    「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
    性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。

    *2008年11月2日に書いた感想を加筆修正
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    プロフィール

    秋林 瑞佳

    Author:秋林 瑞佳
    「あきりん・みずか」と読みます。
    (BLCD感想はジョセフィーヌ秋太夫が担当)

    風来のネットサーファーにして、
    ハンパない映画ギーク。
    そしてなにかと悩める電脳仔羊。

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