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    王一/風弄 『王太子は無慈悲に奪われる』 リブレ出版 2011年 … 擬音擬態のない世界

    王太子は無慈悲に奪われる (ビーボーイコミックス)王太子は無慈悲に奪われる (ビーボーイコミックス)
    (2011/07/08)
    王 一

    商品詳細を見る

    原作(風弄・中国) は20数巻に及ぶ大作で、その挿絵を担当した絵師(王一・台湾)がコミカライズ。台湾で出版されたものを日本語翻訳(本編)+日本向け書き下ろし(短編)。右開き。傲慢×美形やんちゃ。

    事故で死んでしまった主人公・鳳鳴は、移魂術によって生き返る。身体は別人。昔存在した西雷国という国の王太子の身体に、鳳鳴の魂が移ってしまったからだ。勝手がわからず戸惑っているところに、摂政だという臣下・容恬が現れる。強引に鳳鳴を抱こうとする容恬。だがそれを拒絶する鳳鳴の態度と言動から、容恬は王太子とは別人であると気づく。見目が良いだけだった以前の王太子よりも快活な鳳鳴に、容恬は魅力を感じ始める。そして鳳鳴は、王太子として政治に巻き込まれていってしまい――という、異国情緒溢れるタイムリープ系(異次元?)歴史大河モノ。

    やはり餅は餅屋、中国モノは中国人作家にというか、引用される中国故事や慣用句で大変勉強になることが多く、頁をめくるたびに「ナルホド」と唸ることしきりだった。王さんの絵はレトロだけど大きなクセがなく、BLに向いた絵柄だなあと思う。カラー・モノクロともに綺麗だ…本当に綺麗だ。今すぐ日本のBLノベルの絵付けができるレベル。1コマ1コマ丁寧に描き込まれてあり、止め絵・動きのある絵、どちらもS級に上手い(中国や韓国の作家は、輪郭線にトーンを貼るのがデフォルトなのだろうか?)。主人公・鳳鳴の表情がクルクル変わるのが楽しく、容恬は男らしい美しさが際立っている。さらに女官?の秋ちゃんず(秋蘭・秋月・秋星)まで超可愛く、王さんの画集が出たら正直欲しい。

    違和感があるとすれば、場面説明の補助となる擬音語や擬態語がコマの中に一切ないということくらいか。たとえば、ドアを開閉したときには「バタン」という文字が、見つめるときは「じーっ」という文字が、コマのどこかに書かれてあったりするのに、それがない。なので、キャラの動きはすべて絵のみで勝負しなければならない。日本語に慣れていない人が日本語を書く、あるいは作家の意図とは違うデザインの擬音/擬態文字を翻訳担当が描き込んだりすると、どうしても読んでいるうちにズレを感じてしまうので(『絶頂』でその経験アリ)、日本語翻訳にあたって原画から消したのか、最初から描かれてなかったのかはわからないが、入れなかったのは賢明な選択だったと私は思う。

    ストーリーは、傲慢な臣下に抱かれっぱなしだったひ弱王太子の身体に、現代のやんちゃな青年の魂が移り宿るが、それでもやっぱり臣下に愛されちゃうのね…という流れが基本なので、まず強引ラブが好きな人にオススメできる。チューが綺麗な構図で毎回見ごたえがあるものの、ラブシーンはあまり激しくない。ふたりはまだ理解しあっていないのでラブもこれからという印象、受が攻を好きになっていく過程がゆっくり楽しめそう。鳳鳴が意外とすんなり運命を受け入れて王太子業についたのは意外だったが、今後のふたりがとても気になる。なんとなく…「現代の知恵と知識でもって益をもたらす」→「容恬が鳳鳴に激しくラブ」→「両思い」→「ライバル登場」→「みんなで鳳鳴の取り合い」…というタイムリープ系歴史大河BLの王道を踏みそうな気がする。

    巻末収録の短編は王太子(移魂前)と容恬の話。容恬が王太子を好き放題に抱いていたことがよくわかる。本編と打って変わって激し目のエロだったので、リブレから「日本仕様なので、もっとハードに」と云われたのではないかと推測する。残念なのは、『王太子は無慈悲に奪われる』という邦題。奪われるだけじゃないと思うのだが。続きが出ないかもしれないから…大作にこんな凡庸なタイトルをつけたのだろうか。

    続きが読みたいけど、さてどうなる?

    評価:★★★☆(…半星削ろうかと思った。リブレに云いたいことがあるから)
    不思議な運命のもとにふたりが出会いました、相互理解もラブもまだまだです、でもそんなふたりに「最初の大きな関門がやってきました、さあどう乗り切る?…というところで「END」。え?話はこれからなんですけど?…ちょっとリブレさん。あきらかに続きがあるとわかる作品に、「続く」ではなく「END」マークをつけてしまうって、どういうこと?ジャンプ10週打ち切り作品よりひどいぶった切りで、こっちは放り出された気分になるんですけど?続きを出す気はあるの?それともご紹介程度の出版?

    台湾での出版事情はわからないし、大人の事情がいろいろと絡んでいるのかもしれないけれど、続巻が出るのかを明らかにしないなんて…あんまりだ。韓国BL『絶頂』の二の舞はヤダよ…。話が完結している別の作品を選んで出したくれたほうがよかった。作家に対する好感度が高いだけに、とても悔しい。

    ZERO STARS … 論外/問題外作
    ★ … お好きな人はどうぞ。
    ★★ … つまらない。
    ★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
    ★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
    ★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。

    「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
    「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
    性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。

    *2011年7月14日に書いた感想をほぼそのまま転記

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    Author:秋林 瑞佳
    「あきりん・みずか」と読みます。
    (BLCD感想はジョセフィーヌ秋太夫が担当)

    風来のネットサーファーにして、
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