悩める電脳仔羊 a cybersheep in trouble
BL系書籍・ドラマCDの感想/レビューを書いています。人知れず更新中。ネタバレご注意。
高原竟 『嘘つきなオトコ』 松文館 2011年 … まるでコミカライズ
- Posted at 2012.03.18
- l高原 竟
![]() | 嘘つきなオトコ (ダイヤモンドコミックス) (2011/11/28) 高原 竟 商品詳細を見る |
二人組Tee2Booksとして活躍していた高原竟の初ソロ作品。
学生時代になにかと張り合っていた男は、今や消費者金融のエリート。そんな彼から諸事情で借金することになった主人公だったが、出された条件は「絶対服従」。呼び出されて押し倒され、身体を奪われる――なぜコイツはこんなことを俺にする?…それはね、昔から彼はアナタのことが好きだからですよ、どうして気付かないの?…という再会同級生モノ。
久しぶりに高原さんの作品を読んだのだが(その事情は星評価以降に記述)、相変わらず受攻のキャラクター作りがしっかりしているので、彼らがそれぞれが起こす行動や思考の内容に「あ~そう思うだろうね、この人だったら」という説得力が感じられる。あらすじや設定を見るだけなら、攻が受に対してヒドイ目に遭わせる話のように思えるが、そうではない。受は意地っ張りだが人情家で元気が良く、攻との関係を「約束だから」と割り切っている。攻はクールで仕事がデキる男だが実は受に対して一途、受の割り切りに切なさを覗かせていたりする。恋愛に超鈍感な受が攻の気持ちに気づいていく過程が最大の読みどころであり、ふたりは始終ドタバタやっていてコメディのノリがあるせいか、悲壮感はまったくない。ポンポンと話が小気味よく進むし、基本がしっかりしているコミックといえる。
がしかし…どんなに良くできていてもエロ描写や絵柄が十年一昔、全体に古さが漂っていて、なんだか2011年の作品とは思えない。しかもこういう話や設定は、今現在、コミックではなく小説でよく見かけるというか…「意地っ張り鈍感受とクールでデキる攻」「ふたりはライバル」「すれ違うふたりの恋はどう成就する?」という設定、繰り広げられるドタバタしたダイアローグは、ぶっちゃけ鳩村衣杏さんの十八番であり、なんとなく鳩村さんの小説を読んでいるような気分になった(具体的にどの作品に似ているというわけではなく、あくまでも「鳩村さんが書きそう」)。
基本がしっかりしていて出来はいい。でも拭いきれない古さは好みが分かれるだろうし、個性があまりない上に小説でよく見かける設定と内容と感じたので、全体の印象が「まるでコミカライズ」な作品。うーむ。
評価:★★★(10年前だったら美味しくいただけたかも?)
「え?秋林さん、松文館から出てるマンガ読むの?意外!」と驚かれたのですが、ええ、読みます…ってか、松文館うんぬんよりも、高原さんが手掛けた作品を読んだのがかれこれ16年ぶりってことのほうが私には衝撃でして。は?また16年ぶりですか?…はい、そーなんです、扇さんと同期のこれまた某マンガ二次(いわゆる「はなる」)時代、私最愛の作家・海*さんとの合同誌を読んで以来っスよ!ギャオ!
私め、高原さんは立花さんという方と組んでいらっしゃった某マンガ二次時代しか作品を知らないのです。たまったま新刊発売リストの中に「高原竟」という名前を発見、「あのtee2booksの高原さんか…へー、BL描かれているのか、でもってソロになられたのねー」「どんな作品を描かれているのかしら?」とポチったため、本当になにもかもが16年ぶりだったわけですよ。そしたら…「あれ?こういう絵柄だったっけ?」「良く云えば手堅い、悪しく云えば新しさのない作風だったかしら?」と、なんだかすっかり印象が変わっていました。時の流れを痛感。生まれた赤子が高校生になるくらいの年月流れてるんだから、そりゃ仕方ねーべさ…。
切ない16年ぶりの話はまだ続く…以下「continue reading」にて。
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまらない。
★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。
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