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    吉田ナツ 『アクアリウムの中の恋』 リブレ出版 2011年 … 青き恋の不均衡

    アクアリウムの中の恋 (ビーボーイノベルズ)アクアリウムの中の恋 (ビーボーイノベルズ)
    (2011/05)
    吉田 ナツ

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    受への思いから性急に体を求める攻、行為が苦手だとなかなか伝えられない受。好き合っているのにどこか攻が一方的、恋する思いとフィジカルな欲求に釣り合いが取れない若いふたりの葛藤とその恋の行方を、透明感のある筆致で静かに淡々と描いた作品。攻視点三人称。

    あまりいい噂を聞かない同級生・椎名に突然声をかけられ、アクアリウムの中の泳ぐ熱帯魚を一緒に見るようになった沢田。飾り気のない椎名の素顔を知っていくうちに、沢田は彼に対してある思いを抱く――でもそれが恋であるかわからない。やがて別れが訪れ、数年後に再会。再び一緒に熱帯魚を眺めたとき、沢田は椎名に恋をしていることを自覚する。今ならわかる、自分は中学生の頃から椎名に劣情を抱いていた――という攻・沢田の心情が全編通して丁寧に描かれている。

    好きで好きでたまらないから抱きたいのだし、相手も同意をしてくれた。でも盛り上がっているのは自分だけ、行為を受け入れていても椎名は頑なであることに沢田は悩む。BLではよく攻が受を強引に抱き、「なんでわからないんだ!?」と感情を嗜虐的に押し付ける流れになりがちだが、本作ではそんな嗜虐性と押し付けは感じられない。なぜなら、発作的な劣情にどれだけ悩まされても、沢田は椎名を思いやる理性を手放さなかったし、また椎名は椎名で、もとから恋愛に興味のない自分が沢田をどう思っているのか――それが恋であるかどうか、自覚どころか把握しきれていない、先に自覚した沢田に比べずいぶんと幼い男に描かれてあるからで、ふたりは青いんだなあ若いなあ、先に劣情が絡んでしまっただけで、その実、まだまだ手探りの状態の初々しい恋なんだなあと、読んでいて面映くなってしまった。

    それぞれの家庭環境がふたりの性格にどう影響してきたのか、しっかり描かれているので、キャラに説得力と奥行きがある。沢田は思慮深く、椎名は感性が繊細。ふたりが一緒にアクアリウムを眺めていたり、淡々と会話している場面を読むと、ああ、このふたりは一緒にいる時間がとても居心地いいとわかってるんだろうなあ、と思えてくる。だからこそ、この時間を失いたくない…でも劣情に流されるのはつらい、そもそも恋愛感情なのかわからない――沢田だけでなく椎名の気持ちも理解できる流れがあるので、ふたりに介在する感情の不均衡さがよりわかりやすくダイレクトに伝わってくる。

    沢田が椎名を思うゆえに下した決断、そして発生したある事件――ひとりになって自分自身と対峙し、答えを得た椎名が沢田に思いを告げていく場面は愛おしく、その後の流れもごく自然だった。淡々と静かな時間の中で身体を重ねていく場面は、実に扇情的でエロティック。身体だけではなく心も重なったセックスが、恋愛においてどれほど大切なものか――そんな当たり前なことを、青くて未熟なふたりに教えてもらった気がする。

    2011年上半期BLノベル、個人的ベスト1作品。

    @RECOMMEND@
    評価:★★★★★(どうしよう、やられた…私この話と雰囲気が大好きだ、うおー!)
    こういう淡々としていて作った感のしない正直な話、好きだなー。吉田さん初読みなので買うかどうか悩んだけれど、自分の直感信じて良かった。5ツ星つけたことに「そこまで評価するほどじゃない」と思う人は多いかも。でもとにかく私の琴線に触れたの。ぽろろろーん。ただその…繰り返して読みたいというよりは、自分が「なにか」を忘れてしまったときに、本棚から引っ張り出して読みたい作品というか。その…「なにか」を取り戻せるような気がして。「なにか」ってなによ?…って「なにか」なのよ!…としか云えない。漠然とした表現ですみません。

    北畠あけ乃さんが、とてもいい仕事をされている。北畠さんの絵がどういう作品で映えるのか、よくわかっての抜擢。まさに論より証拠。あまりにピッタリで感動…なんて素晴らしいんだろう!

    ZERO STARS … 論外/問題外作
    ★ … お好きな人はどうぞ。
    ★★ … つまらない。
    ★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
    ★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
    ★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。

    「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
    「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
    性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。

    *2011年6月26日に書いた感想をほぼそのまま転記

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    Author:秋林 瑞佳
    「あきりん・みずか」と読みます。
    (BLCD感想はジョセフィーヌ秋太夫が担当)

    風来のネットサーファーにして、
    ハンパない映画ギーク。
    そしてなにかと悩める電脳仔羊。

    気の向くまま、
    ネット場末で人知れず更新中の、
    BL感想&レビューブログです。

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