悩める電脳仔羊 a cybersheep in trouble
BL系書籍・ドラマCDの感想/レビューを書いています。人知れず更新中。ネタバレご注意。
水上シン 『愛の痕跡 〜野獣軍曹と愛玩軍医〜』 ジュネット 2010年 … カリスマは純愛路線
- Posted at 2011.11.27
- l水上 シン
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南方戦線に軍医として派兵された三園は、そこで野性的な軍曹・木崎と出会う。そんなある日、野戦病院に爆弾が直撃する。木崎に助け出され何とか生き残った三園だったが、爆撃のショックとマラリアの高熱で意識が朦朧としてしまい、何かを求めるように木崎に抱きついてしまうのだった。
「軍服のカリスマ」こと、水上シンの新刊。戦火を潜り抜けて生還した軍曹と軍医の話(表題作)と、抜け忍を追う忍者の師匠と弟子の話。計2タイトルを収録した作品集。
◆「愛の痕跡」
舞台は戦場、軍曹×軍医、下克上モノ。
オビ惹句には「犯るか犯られるか!?」「戦場に男2人」「欲望サバイバル」と書かれてあるし、副題は「野獣軍曹と愛玩軍医」となっているしで、受が無体なことをされっぱなしになる相当ハードな話かと思って、かなりビビリながら読み始めたら――これがまったく違っていた。軍医を助けようと必死になる軍曹は不器用なだけであり、その軍医への一途な愛にはホロリとさせられた。強引ではあるが無理強いはしていない。いつしか軍医も軍曹に心惹かれていくのだが、生死をかけた戦争という悲惨で異常な状況に置かれたことによって、それが愛という気持ちなのか軍医には判断がつかない。そして生還。平和な日々を送る軍医が思い出すのは、一緒に過ごしたあの軍曹。どうしても彼が忘れられない――と今度は軍医の一途さにホロリ。再会したふたりが感動的でまたホロリ。終わってみれば、愛に溢れたとてもいい話だった。戦場サバイバルがしっかり描かれていたので、軍医の非現実感に苛まされる姿がとてもリアルに感じられたし、世界観も素晴らしかったと思う。下克上の純愛がお好きな人にオススメ。
◆「霧隠れの恋」
忍者モノ。師匠×弟子。
数年前に抜け忍となった男を抹殺すべく、師匠によっていろいろと仕込まれる弟子が主人公(「忍者は美少年」というガチな設定はしっかり踏まれている)。師匠を一途に慕う可愛らしい弟子だが、抜け忍と師匠がワケアリの元恋人同士であるため複雑な思いになるという、ちょっとした三角関係アリ。抜け忍がけっこういい男だったりしたので、師匠との過去のほうが気になってしまった。話は沙野風結子さんの『つる草の封淫』に似ている(ただし作品発表は水上さんのほうが先)。なにやら怪しい忍法が出てくるし、その作画が綺麗なので見ていて楽しい。ただラストがあまりにも急転直下過ぎて、ちょっと参った。忍者モノがお好きな人にはこちらがオススメだが、私の好みは「愛の痕跡」。
水上さんの作品を読むのは約10年ぶり。自分の好みとの接点がなかったので、「軍服のカリスマ」になってたことに気づかなかった。でも一番驚いたのは、軍服うんぬんではなく、この約10年で水上さんの画力がすごく上がっていたこと。絵柄はレトロでリアルな印象に変わっていて、正直そんなに私好みの絵ではないのだが、モノクロとカラーどちらも実に丁寧に絵を仕上げてあるし、紙面から作画への情熱が迸るように伝わってくるので、好感度は高い。これぞプロフェッショナル。
収録されている話はどちらも読みやすいので、「以前から水上さんが気になっていたけれど、ちょっと著作が手に取りづらくて…」と購入を躊躇っている方には、この作品は入門書としてベストだと思う。清水のステージからジャンプする勢いで、一度読んでみるといいかも。店頭でお買い求めになる方、オビにご注意。
評価:★★★★(…どうしよう?うっかり楽しんでしまった)
カラー口絵で描かれている攻のご子息(…)が、ホタルというよりライトセイバーみたいで。This weapon is your life.
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ところで。本作品を取り上げたことに、このへっぽこブログの常連さんは「秋林さん、いったいどーしたの!?」とビックリされたでしょうねー。いやその…私自身もまさかこれを読むことになるとは思っていなかったんだってばー!(詳細はこのあと「Readmore」以下に書きました)…ジュネットピアスの本、初めて買ったよう。
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまらない。
★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。
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