悩める電脳仔羊 a cybersheep in trouble
BL系書籍・ドラマCDの感想/レビューを書いています。人知れず更新中。ネタバレご注意。
鳩村衣杏 『友人と寝てはいけない』 徳間書店 2012年 … なにかと面倒臭い
- Posted at 2012.10.14
- l鳩村 衣杏
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あらすじに惹かれて購入。同級生モノ。攻×攻風。受一人称。
高校時代からそれなりに気の合う相手でお互い男もイケると知ってはいたが、どちらもネコよりタチだし女もイケる、別に寝る相手には困ってない、恋愛や友情は少々重い…などの理由から、体を重ねることがなかった美馬(マーチャンダイザー)と鮫島(外科医兼ボディトレーナー)。会えば話をするし酒も飲みに行く――そんな友情にも恋愛にも縛られることもない関係を続けてきたふたりは、ともに社長子息で社交的、外面がいい32歳。ある日、実家の窮地を救ってくれた鮫島に借りを返そうと、美馬が「ボディートレーナーだろう?俺の身体を自由にしていい」と提案する。すると鮫島は「セックスしようぜ」と想定外な返答をしてきて――という、どちらも攻であるふたりの関係が友人の枠を越えていく過程を描いた作品。
基本は真面目で仕事にプライドを持っていて実力もある、でもこわだりや対抗意識だったり意地だったりが人並み以上で、攻とちょっとしたライバル関係である受。これまた実力者だけど受ほど意地っ張りではなく、どちらかといえば落ち着いていて寛容的な攻。そんな攻を受が知っていくうちに「なんだいい奴じゃないか」とフォーリンラブ…という展開が鳩村ワーキング系作品の定番で、本作品もだいたい踏襲している。
実家が金持ちだったり、海外ビジネススクール卒業してアパレル業界で成功していたり、優秀な外科医でボディトレーナーとして活躍していたり、ホテルのスイートでシャンパンを一杯で幕開けだったり…まあBLらしいといえばらしい設定の話なんだけども、BLファンタジーというよりどことなく韓国ドラマのような雰囲気。
読み進めていくと、美馬(受)が実家(おもに父親)と確執を持っていることが判明する。父親の存在が自分の自己形成においていかに影響を与えたかという心理描写が一人称で続く。結果的に攻の助言と兄弟の理解で受は乗り越えていくのだが、それと並行してインサートはアリだのナシだの、次はコーインだのなんだの、こだわりが多くて順と回数とタイミングが揃わないと先に進めない恋愛も展開していくので、読んでいて正直しんどかった。「セックスで優位に立つ=インサートする側」とは限らない。好きならどうでも/どっちでもいいじゃないか、なんて面倒臭い男だ!最終的に受はそれを理解するのだが、なんだか唐突感があってすっきりしない。
ヤってる最中におしゃべりが多く、しかもFワードやペニスだのが入ってるのでこっ恥ずかしい。攻×攻だから?…というより、セリフで説明しすぎない上に萎えるFワードに色気がなく、安っぽく感じるからだと思う。ただしこれは読み手の好みに大きくよるものであり、あくまでも私の主観。人によっては「たまらん♪」「攻っぽい☆」だと思われるので、興味のある方はぜひ。
…対等の恋愛とは?
書きたい話の傾向はわかるけど、受キャラが私の好みにどこまでも合わなかった。一人称じゃなかったらもっと読み込めたかも。残念。
評価:★★☆(実は美馬と鮫島のルックスは逆のほうが良かったかな…って思ってたり)
タイトルと設定から「今回はちょっと変わってる?」と思ったものの、読んでみたらいつもの鳩村さんだったーという感じ。そういう意味では『アダルト・エデュケーション』と同じかな。
![]() | アダルト・エデュケーション ~紳士調教~ (ルナノベルズ) (2010/01/29) 鳩村 衣杏 商品詳細を見る |
安心して読めるのはいい、でもこう続くと飽きてしまいそう。あと鳩村さんは「~なんだよな」というキャラのセリフに説明の確認を乗せることが多く、これが「うんちく」のようで、たまに煩わしい。「設定が違っててもキャラの性格やストーリーが基本同じ」ではなく「すべてが違う作品」を読んでみたい。(ちなみに中原一也さんの作品に対してもまったく同じ思いを持っていたりする)そんな「いつもの鳩村さん」とは違うアグレッシブな作品が続いた2009年初め、「鳩村さんじゃないみたい」とかなんとか云われていたので、読者の期待を裏切らず・飽きさせずで良作を描き続けることは難しいんだろうなあ。
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまらない。
★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。
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鳩村衣杏 『好きだなんて聞いてない』 リブレ出版 2009年 … 定石ガイドライン
- Posted at 2011.11.25
- l鳩村 衣杏
![]() | 好きだなんて聞いてない (ビーボーイノベルズ) (2009/07) 鳩村 衣杏 (挿絵:大和 名瀬) 商品詳細を見る |
「俺様」営業で成績を上げ、部下にも信頼されている営業主任・利臣(29歳)は、会社の後輩で幼なじみの夏貴(28歳)に「実はずっとある男に片思いをしている」と打ち明けられて大ショック。「経験しておかねば相手に恥をかかす、だから2丁目へ行く」と云い出す夏貴に、利臣は勢い余って「だったら俺の身体を使え」と提案してしまい――という年下リーマンもの。
結論から云ってしまうと、「あらすじに書かれてあるような設定を別の作品を読んだことがある人!」と訊いたら「はいはい、はーい♪」と挙手がいっぱい見えそうなオーソドックスな作品で、「リーマン・幼なじみ・年下攻が好きなんだけど、それを1冊でカバーした作品を読めないものかしら?」という方にオススメできる仕上がりになっている。これぞ定石、ガイドラインの上を歩くような気分で読める。
夏貴が好きなのは誰なのか、そんなことはもうわかりきったこと(鳩村さんもそのつもりで書いていらっしゃるはず)。それを「先が読めてしまう」とネガティブにとらえるよりは、鳩村さんが描くリーマン受の定番「仕事に対してはマジメでデキる男なのに、恋愛となると奥手な受がジタバタドタバタしてしまう姿」を、ポジティブに楽しんだほうがいいと思う。
「仕事がデキるリーマン受」というキャラはBLで山のように出てくるが、「どーして彼はデキるの?」という説得力を持つキャラとなると、鳩村さんは大概ハズすことがない。なぜならキャラは「俺のやり方」をすでに持っており、「なるほどねー」と読んでいてけっこう共感できるところがあるからで、鳩村さんはその描写にこだわりがあるように感じる。攻は受同様に仕事がデキていい男、「普段は年上である受より大人びて見えるのに、受の前だと年下らしい顔が見える」という年下攻として標準装備されていて欲しい設定もしっかり押さえられている。本当に手堅い。
誤解やすれ違いといったエピソードを盛り込みながら、話はキレイなエンディングを迎える。安心して読めるのだが、その優等生ぶりな出来に物足りなさを感じる。ストーリーが定石の上を歩くがごとく定番なので印象に残りにくく、数週間後には忘れてしまいそうだ。エロもさほど特徴はない。軽い気持ちで読める作品も大切なので、それが悪いとは思わないが、評価の分かれ目にはなるだろう。
仕事面での共感は充分。できれば恋愛面で、リリカルさを強調した描写をもっと読みたいと感じた。
評価:★★★(悪くはないけど…)
ここ1~2年の鳩村さんのリーマンものって、キャラ設定と展開に型填まり感があるなあ…。
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまらない。
★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。
*2009年8月4日に書いた感想を大幅改稿