悩める電脳仔羊 a cybersheep in trouble
BL系書籍・ドラマCDの感想/レビューを書いています。人知れず更新中。ネタバレご注意。
TATSUKI 『八月の杜』 東京漫画社 2010年 … 忘れられない夏
- Posted at 2011.11.18
- lTATSUKI
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無口でスカした東京からの転校生・乃亜がなぜか気になる蒼太。上級生に絡まれていたのを助けた事がきっかけで仲良くなるが、知り合ううちに乃亜への感情は恋へと変わっていく。ある日、乃亜の転校理由が付き合っていた男と揉め事を起こした為と聞かされた蒼太は、勢いで告白をしてしまうのだが…。
自分は女の子に興味ないんだな~となんとなく自覚している田舎の高校生が、都会からやってきた大人っぽい転校生に恋をした。季節の移り変わりとともに互いの距離が少しずつ縮まっていき、若いふたりはそれぞれに悩んで――という甘酸っぱい青春ラブストーリー。甘酸っぱいといっても、そのフレーバーは爽やかレモネードというより素朴な果実酢に近いかもしれない。
若い高校生による恋の話だが、「好きだ好きだ好きだー」と相手に突進していくような恋は描かれていない。恋や人生に対しふたりの考え方は、ポジティブだったりネガティブだったり――他人なんだから違いがあるのは、当然のこと。そんな違いをふたりがごく自然に理解していき、さらに恋愛へと繋がっていく…そんな話のように思えた。印象としては吉田秋生の青春モノに近いだろうか。
自分が10代だったのはもうずいぶんと昔のこと。今の私は高校生の気持ちに共感しづらいので、こういった青春モノは、ノスタルジックな気持ちで一歩下がって、ふたりを眺めるようにして読むことになる。作中そういった読み手と同じポジションにいたキャラが蒼太のおじーちゃんであり、蒼太に適切で適度なアドバイスをする素敵な人だった。そのおじーちゃんの若かりし頃の話もまた面白く、話にさらなる深みを与えていた。
「東京漫画社でござーい」というサブカル的なスノッブカラーはあまり強く出ていなかったし、濃厚なラブシーンもなかったので読みやすかった。ノスタルジックな思いにしばし浸りたい人にはオススメの作品。
評価:★★★★(デビュー作より、この2冊目のほうが好きですね)
「忘れられない夏になる」というモノローグ。これから何十年と続いていく人生の中で、今このときこそが貴重であり二度とやってはこない時間なのだと、若い蒼太がハッキリと自覚していることが…大人の私にはとても切なかったり。
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまらない。
★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。
*2010年6月8日に書いた感想を加筆修正
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