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    木原音瀬 『美しいこと(下)』 蒼竜社 2008年 … 愛しさに気づいて

    美しいこと(下)  (Holly NOVELS)美しいこと(下) (Holly NOVELS)
    (2008/01/29)
    木原 音瀬

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    恋した相手は男だった、あんなに外見も性格も美しい人が女性じゃないなんて――松岡から真実を告げられても「江藤葉子」と「松岡洋介」が重ならない寛末。気持ちに折り合いがつかないまま、松岡と付き合い始めるが、会社でリストラされ再就職活動がことごとく失敗するという憂き目に遭ってしまう。松岡は仕事ができて趣味はいいし、お洒落で人気者――そんな彼がなぜ情けない自分に好意を持っているのだろう?一緒にいるのは楽しいけれど間が持たない、どう応じていいのかわからない。だからやっぱり無理だ、付き合えない――寛末は松岡に別れを切り出して田舎の実家へ戻る。だがそこで思い出すのは松岡のことだった。数ヶ月後、元同僚の結婚式で松岡と再会。ところが彼はそっけない態度を取ってきて――と下巻では寛末視点でストーリーが展開していく。

    木原作品は途中で受と攻の視点が入れ替わることが多く、この作品でも下巻から寛末視点になる(正確にいえば、下巻で章が変わってから)。寛末は、彼なりのゆっくりとしたペースで松岡への気持ちをひとつずつ確認していこうとする。だがいつも結論を決めかねた云い方になってしまうため、何度も絶頂とどん底を往復させられている松岡は、寛末の言葉をなかなか信じることができない。松岡に限らず誰だってそうだろう、何度も傷つきたくはないのだから。

    成功にしている松岡とは違い、いずれ無職になってしまう自分――ダメなときはなにをやってもダメなもの、そういうときは卑屈になりがちで、寛末は松岡の配慮された親切心ですら気にさわってしまう。結局、いったん距離と時間を置くことによって、寛末は松岡のことを落ち着いて考えられるようになるのだが、数ヶ月後に再会してみると、当の松岡は変わっていた。なんで自分にそっけない態度を取るのだろう?―松岡は必死に寛末を忘れようしているからだと読み手にはわかる、でも寛末は松岡本人から云われないと気づかない。松岡はまたつらい思いをする。ただ時間と距離は決して無駄ではなく、寛末の目に「江藤葉子」ではない「松岡洋介」が映り始めていた――それは遅いかもしれない、人によってはイライラさせられるかもしれない、でも時間がかかる場合だってあるだろうと私は思う。とくに寛末のような不器用な男ならば。

    松岡が愛しいと気づいてからの寛末はびっくりするほど大胆になるので、正直云えば少し呆れてしまったのだが、いったんそうなってしまえば、寛末は真摯に付き合ってくれる相手だろう。今度は松岡が素直になる番。今までのことを思えばそれはまだちょっと難しいかもしれない、でもそれだって時間をかけていいはず。

    大変な紆余曲折を経てようやく結ばれたふたり。彼らの幸せが末長く続くことを願う。

    @RECOMMEND@
    評価:★★★★☆(松岡の一途さと健気さに、寛末は一生かけて感謝すべし!べし!べし!べし!)
    日高さんが手掛ける下巻表紙の絵――靴に大コーフン!なんて素晴らしい、この質感!ブラボー!
    …と云ったら「相変わらず靴に萌える人ですね」と押尾(仮)。トム・フォードの男性靴、バンザーイ!

    昨今流行りの小冊子企画がこの作品でもありました。応募の際に巻末の申込用紙を切り取らなくてはいけなくて…人によってはものすっごい抵抗があるだろうなあと思いつつ、チョキチョキ。この作品を読み返すたびにその切り取った跡が指に引っかかり、作品への感動や当時の思い出が蘇ってきます。本の傷として悔やむことはなく…どうやら「切り取ってまで申込をした」思い出が私をせつなくさせるようです。付けざるを得なかった傷を愛おしむというか。でも本格的に電子書籍に移行すれば、そんな気持ちになることもなくなるのでしょうね。

    ZERO STARS … 論外/問題外作
    ★ … お好きな人はどうぞ。
    ★★ … つまらない。
    ★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
    ★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
    ★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。

    「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
    「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
    性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。
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    木原音瀬 『美しいこと (上)』 蒼竜社 2007年 … 恋の絶頂からどん底へ

    美しいこと(上) (Holly NOVELS)美しいこと(上) (Holly NOVELS)
    (2007/11/21)
    木原 音瀬

    商品詳細を見る

    2007年に発売された木原音瀬作品。上巻。「アナタならいくらでもいい人が現れるでしょうに…」と誰もが羨む素敵な男(受)が思いがけずドン臭い男(攻)を好きになってしまい、その一途な思いによって何度も心が押し潰されそうになるせつない恋の話。

    仕事は大変だが順調、ハンサムで女性から人気のある松岡は特殊な趣味を持っていた。それは女装。美しく変身した自分が注目されることでストレスを発散していた松岡は、ある夜、その女装姿のせいで窮地に陥り、途方に暮れてしまう。それを救ったのがたまたま通りかかった男――同じ会社に勤務する寛末だった。その後ふたりは再会するが、寛末は女装に気づかず、真剣に松岡に恋をしてしまう。寄せられる好意の真摯さに対する後ろめたさから、なかなか真実を告げられない松岡。やがて松岡も寛末のことを好きになっていく。そしてある日「たとえどんな姿でも僕はあなたが好きです」と云った寛末に松岡は真実を告げる。だがショックを受けた寛末は受け入れることができず、松岡を避けるようになって――というストーリーが上巻で展開する。松岡視点。

    別に女性になりたいわけではない、女装した自分がとても美しくて人から注目される存在であることに気付き、日常のストレスをその優越感で発散するようになっただけ…というのは特殊といえば特殊な趣味だが、松岡は他人に誇らしく話せるものではないと体裁を気にしており、社内での振る舞いや同僚や寛末に対する配慮などからごく一般的…どころか、いろいろと細かく気がつく「そりゃ人気も業績も出るわ」な男性であることがわかる。かといって、完全無欠のエリートタイプではない。冒頭の窮地は自ら招いた愚かさの結果だし、恋敵の同僚に嫉妬して自己嫌悪に陥る感情は普遍的。読み手の目には人間味のある男として映るだろう。

    そんな松岡がヘタレというより不器用でドン臭い男・寛末に恋をした。自分に好意を寄せてきたのは向こうから…でも寛末が恋する相手は、自分だけど自分ではない。松岡はどんどんつらくなっていく。不器用な男が不器用なりに見せる「あなたが好きなんです」という必死の思い、その純情さ――松岡でなくてもクラっとする人は多いのではないだろうか。

    松岡の同僚にして寛末の上司である福田は、そんな不器用な寛末に対し、悪意が感じられるほど辛辣である。だがそれはペースや考え方が違うためにソリが合わないからであり、寛末が社会人/サラリーマンとして失格だからなのではない。それに気づいている人はまわりにちゃんといても、たまたま要領が悪く不器用な性格が前面に出てしまったり、ソリの合わないキャラが悪意で以って邪魔をするため、寛末ばかりが損をする。木原さんはそんなキャラの肩だけを持つことはしないというか、どのキャラに対しても平等主義というか、人間はいろんな見方をするんだよといいたいのか、単に意地悪なのか――さまざまな考え方を持つキャラクターを登場させて人間関係を多角的に描くので、他のBLとは違う一種独特な彩りが作品に添えられる。人によってはそれが萌えに繋がらず、キリキリとした痛みに感じるかもしれない。

    真実が判明するや、あんなに必死だった寛末は松岡の気持ちに反比例するかのように冷めていく。それは仕方がないことかもしれない。なぜなら相手が男性だという真実は、恋する男にとって予想だにしなかったことなのだから。それでも松岡は寛末を慕い続ける――いっそ諦められたらどんなに楽になれるかと思いながら。真実に対応しきれず混乱状態の寛末は、松岡を完全に振ることも付き合うこともできず、気持ちは中途半端なまま。松岡はそんな優柔不断な寛末とのちょっとしたやりとりで恋の絶頂感を味わったかと思ったら、次の日には拒否され、絶望のどん底に陥る。その繰り返し。苦しい恋であればあるほど、その落差は大きい。そんな男なんてやめてしまえ!――でも好きになってしまった、どうしようもない…。

    松岡のつらい恋は続く。

    「お願いだから…俺が寛末さんを好きだってことを、逆手に取らないで…」(下巻)

    @RECOMMEND@
    評価:★★★★★(文句ナシでしょう、私が推薦するまでもなく。BLCDも素晴らしい出来でした)
    ちょっとギモンに思ったのは、「メイク」という言葉が男の松岡から自然に出てきたこと(「ウィッグ」も気になる)。男性が「メイク」って云うかな?…業界に身を置かない限り、ほとんどの男性は「化粧」なんじゃ?…男性に限らず「化粧」と云う人のほうがまだまだ多いように思える。他のコノハーラ著作でもごく自然に「メイク」が選択されている――そのことにご自身は気づいてなさそう。コノハーラさんは化粧品関連に明るい方なのかしら?と推察。 たとえばケミカル系の会社で仕事をされていたとか…なんとなく外資系って感じがするわー。

    ZERO STARS … 論外/問題外作
    ★ … お好きな人はどうぞ。
    ★★ … つまらない。
    ★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
    ★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
    ★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。

    「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
    「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
    性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。

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    木原音瀬 『夜をわたる月の船』 蒼竜社 2009年 … 乗ったら泥船

    夜をわたる月の船 (Holly NOVELS)夜をわたる月の船 (Holly NOVELS)
    (2009/11/20)
    木原 音瀬 (挿絵:日高 ショーコ)

    商品詳細を見る

    ある日河瀬は上司の柴岡に人事異動をたてにセックスを強要された。どうしても企画部に異動したい河瀬は、たった一度寝るだけで自分の望みが叶うならと、嫌々ながらも男の条件を呑んでしまう。しかし、企画部に異動になったのは河瀬ではなかった。河瀬は自分の体を弄んだ柴岡を憎み、殺意を抱く。…それから数年後、河瀬は北海道支社長になった男に再会し…。


    この会社で生きていくならば、上司である柴岡の条件を飲まねばならない、まったく損なわけではないが、やはり嫌でたまらない――それでもこれは取引だとなんとか割り切って挑んだものの、想像以上の嫌悪なセックスにその後のタイミングのまずさが重なり、人としてのモラルが崩壊寸前になるまでダメージを受けた主人公・河瀬。数年後に柴岡と再会してみると、彼は相変わらず理解不能な言動や行動ばかりする男だった。だがいつしかそんな男に、河瀬はずぶずぶと深くのめり込んでしまう――という、死にたがりで自己完結な魔性のオヤジと、そんなオヤジに嵌ってもがいて足掻いてしまう主人公による、終わりのなさそうな恋愛問答モノ。

    吸い込まれるように集中して読んだのだが、柴岡を「なんだこのオッサン?」とは思っても、そんな柴岡を理解できないから嫌だとか、話がつまらないとか、BLとしてどうよとか、そういう気持ちにはなれなくて、「あ〜あ、とんだ魔性のオヤジにつかまっちゃったもんだよ」と、河瀬に同情してしまった。なぜなら、河瀬以外の登場人物の目に映る柴岡は「仕事が出来て頭が良く、常識を持ち合わせている男」、誰も彼の本性を知らないからだ。自分勝手な発言はよく出てくるけど、理解不能な内容でも理路整然としているから切り返せないし、50近い男だから年下の男を上から目線で見るのは仕方がない。こりゃ厄介だ。

    老いることが死への近道だし、自分の髪の白さでそれが実感できる。どうせ死んでいくのだから、掃除をする意味はないし、部屋がゴミに埋もれても構わない。ここに訪れる者はいないのだから。

    あんなひどいことをした男を助けるつもりはなかったのに、なぜか目が離せず、いつの間にか自覚のない恋になっていた。どうにかならないか、そばに行けないかと船に乗ってみたらば泥船で、どんどん沈んでいく。でももう戻れない。

    やたらと死にたがる理由は、最後の最後にある程度判明するけれど、知ったからといってどうだろう?
    人が人を理解したいという気持ちは、もしかして傲慢なことなんじゃないだろうか?
    どんなに体を重ねたって、結婚して家族になったって、私は私、俺は俺。
    死ぬときはひとりで、なにも持っていけない。

    それは究極のヒューマニズムかもしれない。

    柴岡本人は認めたくないだろうが、救済を求めるわずかなシグナルが河瀬に向かって発せられていたから、あのラストになったのかなと思った。ある程度線を引いた上で、柴岡は河瀬を受け入れたような気がする。すったもんだは続くだろうが、未来はあるだろう。

    人間を描いているよなあと、しみじみ思った1本。

    評価:★★★★★(木原作品の感想を初めてマトモに書いたのに、人には薦められない…)
    コノハーラさんって、するどく人間観察してそう。お会いすることがあったら、正直怖い。見透かされそうで。

    ZERO STARS … 論外/問題外作
    ★ … お好きな人はどうぞ。
    ★★ … つまらない。
    ★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
    ★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
    ★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。

    「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
    「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
    性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。

    *2010年1月2日に書いた感想を少しだけ訂正
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    プロフィール

    秋林 瑞佳

    Author:秋林 瑞佳
    「あきりん・みずか」と読みます。
    (BLCD感想はジョセフィーヌ秋太夫が担当)

    風来のネットサーファーにして、
    ハンパない映画ギーク。
    そしてなにかと悩める電脳仔羊。

    気の向くまま、
    ネット場末で人知れず更新中の、
    BL感想&レビューブログです。

    >>ネタバレ上等<<
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