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    樹生かなめ 『龍の仁義、Dr.の流儀』 講談社 2009年 … それぞれの贖い

    龍の仁義、Dr.の流儀 (講談社X文庫―ホワイトハート)龍の仁義、Dr.の流儀 (講談社X文庫―ホワイトハート)
    (2009/02/04)
    樹生 かなめ (挿絵:奈良 千春)

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    一筋縄ではどーにもいかないクセ者・晴信が再々登場、その結婚騒動に巻き込まれる氷川。なんとしてでも氷川に病院を辞めさせ、姐として大人しくしてもらおうと画策する眞鍋組。それぞれの骨折り損ぶりと、モグリの医者・木村の過去が明らかになる巻。

    前巻同様、話はどっちの方向に進むのだろうかと思っていたら、いきなり医者の不倫、男女の修羅場から始まった。医者に対し、けっこう辛らつだったりする樹生さん(元医療従事者…たぶんポジション的には久保田あたりだろうか)。学生時代に医学部の連中と仲良かった私から云わせると、たしかに医者になってから変わってしまった奴もいるが、マトモな奴だって多いといちおうフォローをしておく。ただ、対比させるように真面目な医者もしっかり描かれているので、「世の中にはいろんな奴がいて、とんでもないことを常識にしていたりする」ことのデフォルメだと私は認識している。

    どんな医者にも事情がある…ということで、この巻では木村先生の過去、彼がどんな背景でモグリの医者になったかが描かれている。木村先生は「腐っても医者」だった。モグリ化の背景には「贖い(あがない)」があって、それはリキが力也1stに、晴信がリキに、安部さんが祐の家庭に、それぞれ抱き続けているものと根は同じだと私は思う。他人から見れば「もういいじゃないか、そう思い込むほうが逆に不幸なのでは」であろうと、当事者にとってはそうはいかない。だからといって、それでリキや木村先生は不幸なのかといえば、祐が云うように、本人は不幸だとは思っていないと思う。

    それは悲しいこと?第三者がどう思おうとそれは本人の意思であって、本人が不幸と思っていないならそれも人生におけるひとつの選択じゃないか――そういうことがシリーズを通して描かれているような気がする。ただ氷川は、どうしても割り切れない。その思いを清和にぶつけるが、―個人の意思を尊重する清和はなにも云えない。BLでよくあるのは、「贖罪で追い詰められている受が攻によって救われる」というパターンだが、基本的に樹生さんの作品はそういう甘さがない。冷たいんじゃなくて、それが現実だ、いろんな思いがあって当然なんだと云っているように私は感じる。

    ちょっと残念だったのは、いつもならば「あのエピソードが伏線だったのか」とあとで気付くのに、今回はプリンスの話が出た時点で「ああ、木村先生の番ね」と先が見えてしまったこと。前巻から強化されたような印象を受けるラブシーンのバランスが悪いことも、少々気になる。でもハナからバランスを求められている作家ではないので、これはこれでいいいのかもしれない。

    次の展開は依然不透明のまま、ストーリーは「アラブの皇太子現れる!?」な次巻『龍の兄弟、Dr.の同志』へ――って…えええええええ!?アラブなんですかーーーー!?

    評価:★★★☆(氷川の特技のひとつが「劇薬の調合」だってこと、すっかり忘れてた)
    氷川を抱き潰そう(=足腰立たなくして仕事を休ませたい)と考えた清和くんが、パウダールームでやっちゃったのはいいんだけど、その白い落し物がブリオーニのスーツだけでなく壁や床にまで激しく飛び散り、氷川が翌朝真っ青になりながら「こ、こんなところにまで…」と雑巾で拭く…って、お掃除まで書いてきたBLなんて初めて読んだよー…。そんな氷川にアドバイス。ブリオーニのスーツクリーニングは、落し物が付いていようが付いていなかろうが、最高品質仕上げができる信頼のおけるお店に依頼するよーに。

    ZERO STARS … 論外/問題外作
    ★ … お好きな人はどうぞ。
    ★★ … つまらない。
    ★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
    ★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
    ★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。

    「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
    「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
    性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。

    *2009年9月24日に書いた感想を大幅改稿
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    樹生かなめ 『龍の右腕、Dr.の哀憐』 講談社 2008年 … 虎のモテモテ騒動記

    龍の右腕、Dr.の哀憐 (講談社X文庫きD- 14―ホワイトハート)龍の右腕、Dr.の哀憐 (講談社X文庫きD- 14―ホワイトハート)
    (2008/10/01)
    樹生 かなめ (挿絵:奈良 千春)

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    藤堂組との抗争が終結して眞鍋組の日々は落ち着きを取り戻したが、舎弟たちは突飛な行動をしがちな氷川に過剰な護衛をし出す。護衛は無用と訴えても一歩も引かない舎弟たちに、氷川はある提案をするが――今度は身内ですったもんだ状態の眞鍋組と氷川の騒動を描いた巻。

    藤堂編が終わり、さてどんな展開になるのかと思ったら、過剰な護衛を巡って氷川と祐が牽制し合い、眞鍋組は男姐を持つせいでホモに狙われ一苦労、その中でもダントツ人気がリキ、彼を巡ってひと騒動が起きて眞鍋はタイヘン…と、ドタバタやりながらも比較的軽いノリで進む。

    前半のホストクラブの場面ではハイパーぶりが発揮されていて、どっちに飛んでいくかヒヤヒヤしながら読んでいたのだが、京介のいるホストクラブ・ジュリアス――あんなにホモがいていいんだろうか?

    リキ周辺の話なので、彼が「女お断り」になってしまった理由や、そのモテっぷりに相反するつれなさが語られ、クセ者の兄・晴信に新キャラの友人・正道まで登場し、眞鍋の虎のストイックぶりがフィーチャーされていく。「なんでそこまで?」と誰もが思うリキのストイックぶりだが、兄の晴信も「なんでそこまで?」な思い込み男、血は争えない。弟に継がせたいから結婚したくないと晴信が苦し紛れについた大ウソな理由に、正道がひとこと「晴信さんらしいですね」。でもその理由がピーーであるなら、私に云わせれば「かなめさんらしいですね」である。

    そして後半、話は「リキのモテモテ騒動記」から「清和と氷川のラブホテルドキドキ体験記」へ。「龍&Dr.」シリーズのラブシーンはフェードアウドが基本なのだが、いつもよりお色気がプラスされている。ただ清和と氷川のズレっぷりもシリーズの基本なので、どんなにお色気度がアップしてもやはり笑いが伴う場面になる。受に洗面器を顔に当てられ「見ちゃ駄目」と云われる攻…清和も大変である。

    祐の発言「このままでは名取グループの眞鍋支社、名取のお坊ちゃんに眞鍋が顎で遣われるのはムカつく」が気になるも、話がどの方向に進んでいくのかイマイチつかめないまま、次巻『龍の仁義、Dr.の流儀』へ。

    評価:★★★☆(氷川vs.祐、まるでタヌキとキツネのやりとり)
    ソープランドの椅子。『龍の恋情、Dr.の慕情』で氷川が熟女専門のソープに乗り込んだとき、たしか「あれが噂の椅子か」みたいなことを云っていたっけ。それがようやくこの巻にて登場。清和くんを洗うのに便利だから欲しいという氷川も氷川だけど、「愛しい人が求めるのならば」という心理が働いたとはいえ、舎弟に手配させようとした清和くんも清和くんだよなあ。例のゴムの一件もそうだったけど、舎弟に手配させるのは恥ずかしいから「僕が買う」と云い出す氷川――どうやって買うつもりなんだろう?…それ専門の店に行くの?それとも通販?…通販だったら、第二ビルに「氷川諒一様」でブツが届けられた時点で舎弟が危険物かどうかをチェックするだろうから、結局「姐さん…なんてものを…」って思われるんじゃ?…ってか、氷川なら「愛する清和くんのためなら」とお店に買いに行くか。前巻で売っている場所もわかっただろうし。

    ZERO STARS … 論外/問題外作
    ★ … お好きな人はどうぞ。
    ★★ … つまらない。
    ★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
    ★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
    ★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。

    「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
    「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
    性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。

    *2009年9月23日に書いた感想を大幅改稿

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    樹生かなめ 『龍の求愛、Dr.の奇襲』 講談社 2008年 … 愛に打たれる

    龍の求愛、Dr.の奇襲 (講談社X文庫―ホワイトハート)龍の求愛、Dr.の奇襲 (講談社X文庫―ホワイトハート)
    (2008/08/01)
    樹生 かなめ

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    藤堂組のバックに国内最大規模の長江組がつくことになり、大きな危機に直面した眞鍋組は桐嶋の提案で藤堂の舎弟と話し合いをすることになる。だがそこで事件が発生。混乱に陥った眞鍋組と清和を守るため、氷川は桐嶋とともに藤堂組へ殴り込みをかけるが――清和と氷川の愛の強さと深さに心打たれる巻。

    桐嶋の提案で作戦変更、藤堂の舎弟との話し合いに向かったふたり(名前伏せておきます)から報告を受けないと、次の手が打てない眞鍋組はいったん待機。ところが思いがけない報告を受け、氷川は桐嶋とふたりで藤堂組へ殴り込みをかけることに。なぜ氷川は「愛する清和や眞鍋のため」自ら戦おうとするのか。たぶん典子さんが氷川に語った「極道の姐として女房としてなにができるか?」「すべてを捨てられるか?」が影響していて、それがずっと彼の頭の隅にあるからなのだと思う。氷川は医者としての倫理からは外れた行動ができない。でも清和と眞鍋を守るためなら、自分にできることすべてをぶつけていく――真面目で一途な氷川はなにしでかすかわからないから、眞鍋組は焦ってしまう。樹生さんの描くヤクザはBL界でも敵や不都合な人物に対して容赦がなく、氷川の知らないところで諜報部隊が殺人を犯したりもする。そんな眞鍋組と時に倫理観の違いから対立をする氷川――ラブ以外の読みどころがあるとすればそこもひとつだと思う。

    桐嶋と氷川、そして眞鍋組――それぞれの思いが交錯する中で藤堂との決着がつく。藤堂はどうなるのか?それはまた今後描かれるかもしれない。

    対決を終え、帰宅したふたりにようやく甘い時間が訪れる――「龍&Dr.」シリーズは、ラブシーンが短かったり抽象的だったりフェードアウトや朝チュンだったりすることが多いのだが、私個人としては、場面が行為が何ページ続くよりそのほうがずっと甘く感じる。好みといえばそれまでかもしれない。でも「ふたりの秘めごとはふたりだけのもの」、そういう気持ちになるだけで充分だと感じる。でも今回は甘いラブシーンで終わらない。もうひとつ滝沢との決着が残っており、氷川は自分で完璧にケリをつけていく。氷川が滝沢に云った言葉と、それを裏付けるため清和が滝沢の目の前で取った行動に――胸が熱くなってしまった。「2008年もっとも『愛』を感じさせてくれたBL作品」と私は年間ベスト評で書いたが、それはウソじゃない。

    氷川が滝沢に語った「女性と付き合ったことのある男性は、女性と結婚する」という言葉に、「それは違うんじゃないか」と納得できない人がいるかもしれない。でもその正否は問題じゃない。重要なのは、氷川がそれを何度も経験したゆえに彼の中では不変の真理になっていて、自らそれで滝沢に決定的なケリをつけたこと、そしてその彼を誰よりも深く愛している人がいる――その人が滝沢の前で氷川の語る愛を実証してみせたこと、である。そんなふたりの姿がとても感動的で…私は胸がいっぱいになった。心底、嬉しかったんだと思う。派手さはないけれど、これほど愛に真摯なふたりを感じさせる作品、他ではなかなか読めない。樹生さんの作品はどんなにぶっ飛び水切り石な展開を見せても、決して現実から離れてしまった世界を描いているわけではない。それなのに、一種のファンタジーであるBLにしっかり留まっている。私は素晴らしいと思う。

    藤堂編が終了、今後を予感させるいくつかの伏線を感じつつ――話は『龍の右腕、Dr.の哀憐』へと続く。

    @RECOMMEND@
    評価:★★★★★★★★★★(文句ナシ殿堂入り。すべてにおいて、感動的なくらい、パーフェクト)
    組の内情や、舎弟のちょっとした横顔が明らかになっていく巻でもあったなあ。中で一番驚いたのは、氷川たちが眞鍋第三ビルの地下を歩いていたら、第二ビルに着いちゃったこと。なんで?清和くんが第二ビルと第三ビル近辺の土地を全部買い取って、地下で繋げちゃったからなんです…って、清和くん、いったいどこの剣菱万作?…そんなことができるほど眞鍋の金庫が潤ったのは、ある財閥がバックについていたから。この財閥については、またいつか話が絡んできそうっスね。

    あともうひとつ。私、**が本当に**されたと思っちゃった。これがたとえば英田さんやエダさんの作品だったら「そんなわけないじゃーん♪」と余裕で読んでいたと思うの。でも書いているの、そーゆーことになったら容赦をまったくせずにバッサリいく樹生さんでしょ?(あとそんなのコノハーラさんくらい)、だから騙された!この巻の初読みは通勤電車の中だったんだけど、無情にもその場面でカイシャ最寄り駅に到着してしまって、続きはお昼休みまでおあずけ。そして待ちわびたお昼休み、5分で昼食を切り上げ、営業でノコノコやって来たオッシーを完全にムシしてまで続きを読み出したのに、真相がわかる頁までに至らず、そのままお昼休みが終了。「こんな状態ではシゴトにならん!」と、お手洗いに本を持ち込んで読もうとしたら今度は入り口付近でオッシーに「なにやってるんですか?」と指摘されて、うっかりうろたえてしまいって実行できず。結局、続きを読んだのは最終電車の中でした。ホントバカですね、私。

    ZERO STARS … 論外/問題外作
    ★ … お好きな人はどうぞ。
    ★★ … つまらない。
    ★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
    ★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
    ★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。

    「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
    「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
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    *2009年9月22日に書いた感想を大幅改稿
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    樹生かなめ 『龍の烈火、Dr.の憂愁』 講談社 2008年 … 不条理の中の良心

    龍の烈火、Dr.の憂愁 (講談社X文庫―ホワイトハート)龍の烈火、Dr.の憂愁 (講談社X文庫―ホワイトハート)
    (2008/02/05)
    樹生 かなめ (挿絵:奈良 千春)

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    藤堂組との戦争が勃発。雪辱を果たそうと燃える祐を軍師に据えた眞鍋組は、さまざな圧力を藤堂組にかけ始めが、なにをしでかすかわからないと第三ビルに氷川を閉じ込めようとする。だが氷川が大人しくしているわけがなく――という、本格的な闘争に入っていく眞鍋組とそれを案じる氷川の姿が描かれた巻。

    できれば無血で勝利を収めたい眞鍋組、祐が立てた作戦は藤堂の自滅を狙った情報操作が基本。だがターゲットとなる藤堂には複雑な過去があるという裏事情を竿師・桐嶋が氷川に語り出したことによって、戦争はまた別の方向へと向かう。その藤堂の悲しい過去は「人は見かけによらない、本心は別にある」「信じていた人からの裏切り」という不条理エピソードによって判明していくのだが、どんなに傷つけられてボロボロになっても人生は続く、どんなにつらくても萎えた足で自ら立ち上がらねばならない、たしかに今後の自分に多大な影響は出るだろう、でもどんなに憎くてもその恨み節だけでは生きていけない――敵である藤堂もそんな道を歩んできた人間だった、ということもわかってくる。彼の身の上はある意味、清和や氷川と同じだったと云える。ただ藤堂の場合、小狡く小汚ないやり方でのし上ってきたので、清和や氷川のようにまわりには恵まれていない。とても悲しい現実だが、それでも藤堂を心配する友人はいて、桐嶋は藤堂の性根は腐りきっていなからなんとかしたいと考えている。その桐嶋の存在が藤堂の救いになれば――戦争反対という立場からだけでなく、優しい氷川ならそういう気持ちになるだろう。桐嶋を信じる氷川、今度はそれが「信じていた人からの裏切り」へのアンチテーゼになっていて、不条理の中でも良心は存在するんだと云っているように感じる。

    ところが話は眞鍋組vs.藤堂組だけで終わらない。氷川の前に高校の同級生・滝沢が現れ、思いがけず氷川は熱い告白を受けてしまう。告白に大きく動揺したのは、受けた当の氷川よりヤクザな自分に負い目を持つ清和だった――と、カタギの恋敵登場で清和くんまたもや19歳の素顔がチラリ。さてこちらの決着もどうなるか。

    桐嶋を信じるなんてとんでもないと非難する眞鍋組の面々を氷川がなんとか説得、祐の戦略はシナリオ変更、桐嶋の思いは果たして藤堂に届くのか――『龍の求愛、Dr.の奇襲』へ続く。

    評価:★★★★(「腹にダイナマイト」というフレーズ、懐かしいなあ)
    京介が氷川と桐嶋に案内した隠れ家の持ち主の名前聞いて、超ビックリした。さらにその人が恋人とそこに3ヶ月前まで住んでいたって…えー!?私も氷川と同じで京介の云っている人が最初理解できなくて、「…は?」と思ったもん。ホント人は見かけによらないとゆーかいつの間にそんなとゆーか、そりゃいたっておかしくない話なんだけど、普段を思えば「え?あの人が?」となってしまうとゆーか…。突然の「えー!?」という裏エピソード挿入も、またかなめさんらしいですね。

    ZERO STARS … 論外/問題外作
    ★ … お好きな人はどうぞ。
    ★★ … つまらない。
    ★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
    ★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
    ★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。

    「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
    「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
    性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。

    *2009年9月18日に書いた感想を大幅改稿しました
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    眞鍋組の舎弟たち

    熱狂的なファンが多いことで知られる樹生かなめさん。「キワモノ作家」という呼称がひとり歩きしているためか、BL愛好家でも著作を読んだことがない/手が出しづらいという方が多いと聞きます。樹生さんの代表作といわれているのが、講談社X文庫ホワイトハートから出ている「龍&Dr.」シリーズです。挿絵(担当:奈良千春さん)の印象からハードなヤクザものと思われがちですが、実は違います。

    今回は、そんな「龍&Dr.」シリーズの魅力と個性的な脇役たちについて語りたいと思います。

    主人公は日本人形のような美貌を持つ内科医・氷川(29歳)。10年の時を経て再会した眞鍋組の若き二代目組長・清和(19歳)から熱烈に愛されるも、見た目を完全に裏切るぶっとんだ性格によって、清和だけでなく眞鍋組全体をも振り回し、舎弟たちは今日もてんてこ舞い…という、コメディ要素の強いストーリーが展開します。2011年11月現在、講談社X文庫ホワイトハートより15冊(+スピンオフ2冊)出ています。

    「龍&Dr.」シリーズは、清和と氷川のラブストーリーであると同時に眞鍋組の物語でもあります。

    シリーズには魅力的でキャラ立ちした脇役が大勢出てきます。とくに清和付き舎弟たちであるリキ、ショウ、サメ、祐、そしてホスト・京介の個性は際立っており、出番も多く、氷川の視点を通して彼らの性格や個性に基づく活躍を読むことができます。

    BL的お約束事を綺麗に踏襲した作品に慣れている/お好きな方が「龍&Dr.」シリーズを初めて読み出すと、「なかなか本題に入らない(≒ラブシーンになるまでの話が長い)」「関係のないダイアローグ(会話)がずっと続く」「予想がまったくつかない」「振り回される」といった感想をお持ちになると思います。責めるつもりはありません。なぜならそれは自然な反応だと思うからです。

    一読すると本題と関係のないように思えるダイアローグは、キャラの性格や個性を知る上で重要な役割を担っています。BL基準外ぶっとんだ思考を持つ氷川はおバカさんのように見えて実は賢く、処世術に長けています。ヤクザの世界から氷川を遠ざけたいと考えている清和や舎弟たちは、眞鍋組の表と裏、そのどちらの顔についても氷川にあまり話したがりません。誰も教えてくれない眞鍋組の状況を知ろうと、氷川は舎弟の性格に合わせた言動をしたり行動を起こしたりします。読み手はそんな氷川と舎弟のダイアローグを読んでいくうちに、「この舎弟ならたしかにそういう発言をするだろうな」とわかってきます。氷川に振り回される舎弟たちが可愛らしく見えてきますし、共感するかどうかは別としてその思考や言動につい納得してしまいます。

    眞鍋組舎弟と氷川に関するテキストを、巻別感想の間に入れたのか。

    舎弟たちの性格やポジションをつかんでおけば、「vs.藤堂」最大のクライマックスを迎える『龍の烈火~』『龍の求愛~』の面白さが倍増するからです。意外な横顔を見せる舎弟が出てくるので、氷川と一緒に驚いたり感動したりすることができますし、また逆に舎弟たちと一緒に氷川の行動に驚かされたりもするのでうっかり共感してしまうでしょう。

    たとえば『龍の灼熱~』で、氷川は竿師・桐嶋によって連れ去られてしまいます。なぜならそのときの氷川付きドライバーがたまたまショウではなく腕力のない祐だったからで、これがもし腕の立つショウだったら桐嶋に応戦できたでしょう。でももしショウがやられてしまったら?氷川は最悪の結末を迎えたと思います。リキが云っていたように、腕力に自信のない祐ならではの対策があったからこそ、眞鍋組は氷川と祐の消息がつかめたわけであり、また最大の屈辱を味わされた祐は『龍の烈火~』以降、雪辱を果すべく燃えるはずです。

    そんな舎弟たちについては、WH公式サイトでも語られています。

    ★「眞鍋組諜報部隊・鮫島昭典の秘レポート」→こちら

    今度は私がそんな舎弟たちの特徴をひとりずつ書いてみようと思います。
    (わかりやすいように、将棋の駒に例えてみます)

    ■リキ(25歳)眞鍋の虎、清和の右腕
    「飛車」 縦横何マスでも動ける。敵陣に入ると「竜王」(飛+銀)。
    長所:眞鍋一の腕っ節と頭脳。木刀持たせたら敵なし。普段はポーカーフェイスで冷静沈着。
    短所:無口でストイック過ぎ。女の扱いが下手。子どもを泣かすコワモテ。兄がクセ者。

    ■ショウ(20歳) 氷川のボディガード兼送迎ドライバー
    「香車」 前に何マスでも動ける(前にしか動けない)。敵陣に入ると「成香」(金)。
    長所:レーサー顔負けの運転技術。見かけはチンピラだが素直。腕っ節に自信あり。底無しの体力。
    短所:鉄砲玉。顔に出るのでウソがヘタ。無類の女好きだが長続きせずいつも逃げられる。

    ■サメ(年齢不詳) 真鍋の諜報部隊長にして闇の必殺仕置人
    「角行」 斜めに何マスでも動ける。敵陣に入ると「竜馬」(角+金)。
    長所:外人部隊仕込みのスパイ活動、高い実戦的殺傷能力。見た目は没個性なリーマン風。
    短所:ひょうひょうとして本心がつかめない。
    *眞鍋組は「飛車」(リキ)と「角行」(サメ)が落ちたら大変なことになる。

    ■祐(24歳)リキ直属の部下
    「銀将」 前と斜めに1マスける(背後と横には動けない)。敵陣に入ると「成銀」(金)。
    長所:優しい顔立ちを裏切る狡猾な戦略家。甘い声。女の扱いが上手い。芸能界に明るい。
    短所:体力&腕力勝負はからっきしダメの役立たず。斜め見の人生観。女に辛辣。小賢しい。

    ■京介(20歳) ショウの連れ、眞鍋組入りを拒否し続けるジュリアスNo.1ホスト
    「桂馬」 前2、横1の位置に移動でき、その際、駒を飛び越えることができる。
    長所:とにかく美形。ゴジラ並みの腕っ節。女の扱いが上手い。長けた処世術による広い交友関係。
    短所:スタイリッシュ宇宙人(社交的だけど心は基本クローズド)
    *眞鍋組の構成員ではないので、単独で変わった動きができる=「桂馬」

    こんな感じでしょうか?
    語れば長くなるので、あとはシリーズで確認していただけたらと思います。
    きっとお気に入りの舎弟が出てくるでしょう。
    (ちなみに私はサメがお気に入りです♪)

    ――以上、舎弟たちのお話でした♪
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    樹生かなめ 『龍の灼熱、Dr.の情愛』 講談社 2007年 … 龍の過去と戦争の影

    龍の灼熱、Dr.の情愛 (講談社X文庫―ホワイトハート)龍の灼熱、Dr.の情愛 (講談社X文庫―ホワイトハート)
    (2007/10)
    樹生 かなめ (挿絵:奈良 千春)

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    藤堂に一発食らわした氷川と眞鍋組+京介は、高級温泉旅館へ一泊旅行。清和の想像を絶する据え膳歴と暗い過去に驚く氷川、そして「愛はなんて複雑なものなんだ」という話を挟みながら、氷川を狙った藤堂の卑劣な反撃によって、「眞鍋組vs.藤堂組」――戦争の火蓋が切られた巻。

    ショウと京介による凄まじい大喧嘩、次から次へと出てくる過去の女の名に嫉妬した氷川が大口撃、それを黙り込みの術で防戦する清和、すっ呆けることでその火の粉を払おうとするリキと祐の頭脳派・参謀チーム…という、眞鍋組+京介の日ごろの図式がよくわかる温泉旅行から本編がスタート。最初はすちゃらかハイパーな展開ぶりにハラハラしてしまうのだが、話の重点は浮気疑惑や大喧嘩といった騒動の数々ではなく、喧騒を避けた静けさの中で、清和が遠い目をしながらひっそりと氷川に語り出した過去の話にあると思う。ショウとの出会い、ヤクザになると決めたいきさつ――普段の生活では語る)きっかけがなくても、旅先でならそれが自然と口に出てくる…そういうことが描かれていると思ったのだが、どうだろう?…騒動が激しいぶん、清和が淡々と語る話はずいぶんと穏やかに聞こえる。でも語られる内容はそれに反し、暗く重く悲しい。かなめ節が効いた対比である。そして語られた内容はその後、別のエピソードに絡んでいく。すちゃらかハイパーなキャラと展開が目くらましになっているので、それらに気付くのはいつもずっとあとだったりするのだが。

    「ヤクザのシノギのネタは女」ということからなのか、男女の話がよく出てくる龍&Dr.シリーズ。本巻でも美沙子さんと恭介の関係がフィーチャーされている。虐待を受けていた清和を救ったことで、ヤクザの恭介に人生ごととらわれてしまった美沙子。ボロボロにされても彼女は恭介を愛していたのか。ろくでなしヤクザ・恭介は彼女をどう思っていたのか。清和も云うようにふたりについては「わからない」。それは当事者しかわからない関係であって、愛は本当に複雑だと思う。

    時が流れ、今度は高校生になった清和が美沙子を恭介から救う。その際に、怒りを制御できないヤクザの本性が自分の中に潜んでいることを自覚した清和は、そのことを氷川に語るが氷川はそれが信じられない。ところが後半、藤堂の卑劣な策略に氷川が落ちて最大の危機にさらされたときに、彼は夜叉と化した清和を目の当たりにしてしまう。それでも氷川は清和が恐ろしいと思えない。悲しくてせつなくてたまらないが、愛しく思う気持ちは止まらない。氷川の前に愛の踏み絵は存在しないからだろう。

    藤堂の汚い策略に怒りを爆発させた眞鍋組は、藤堂との戦争を決意。必死に止めようとする氷川。ストーリーは、対決が表面化していく『龍の烈火、Dr.の憂愁』へ続く。

    評価:★★★★(物語がどんどん面白くなってきた)
    サメが前巻で「バイクの運転ならリキより自分が上」みたいなことを云っていて、もしかしたらバイクだけでなく、車の運転もサメのほうが上なのかな?…と思っていたら、冒頭でリキがウィンカーの出し間違いをして、それをショウに指摘されていた。そうか、サメが上手いうんぬんの前にリキは純粋に運転が下手なのか…。

    この巻で心底ビックリさせられたのは、竿師・桐嶋を救うために氷川が清和くんに云ったセリフ。マジたまげた。BL界では「攻が誰よりも大きい」がセオリー(らしい)、つまりこのシリーズなら清和くんが一番じゃないとダメ…って、いやそのあの…私もかなめさん同様、別にそうでなくてもいいと思うんだけどね、桐嶋のほうが大きいということよりも、氷川がそれを清和くんに云ったということにビックリさせられたよ!ホントなに云い出すかわかんない、BL基準外な受だよなあ。ちなみに大きいのを見たければ、オランダのアムステルダムにある某博物館へ行くと、世界一のソレを写真で見ることができます。映画「ブギーナイツ」を観てもいいでしょう…と、ジョセフィーヌ秋太夫さんが云ってました(…わわ、私じゃないですってば!)。

    ZERO STARS … 論外/問題外作
    ★ … お好きな人はどうぞ。
    ★★ … つまらない。
    ★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
    ★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
    ★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。

    「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
    「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
    性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。

    *2009年9月12日に書いた感想を大幅改稿
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    樹生かなめ 『龍の恋情、Dr.の慕情』 講談社 2006年 … 母の思い、子の想い

    龍の恋情、Dr.の慕情 (講談社X文庫 ホワイトハート)龍の恋情、Dr.の慕情 (講談社X文庫 ホワイトハート)
    (2006/12/02)
    樹生 かなめ (挿絵:奈良 千春)

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    舎弟・祐(たすく)が初登場。清和の実母・園子の行方、胡散臭い芸能プロダクションに所属するタレントの夢と現実、実母の愛を知らない氷川・清和・祐の三様の思い、宿敵・藤堂の(再)登場によってキナ臭くなってきた眞鍋組周辺などを描きながら、清和&氷川の揺るぎなき愛が語られる作品。

    ショウが氷川のボディガード兼送迎ドライバーに復帰して氷川の日常も普通に戻り、さてどうなる?…と思っていたら、いきなりデブキャラ・カレンちゃん(祐が経営する芸能プロダクションのタレント)の登場にビックリした。樹生作品には、重要キャラなのかデフォルメキャラなのか、ダイアローグを読み進めないと判断つかない目くらましキャラが多い。それであとから「やられたそうきたか…」ということがある。カレンちゃんはいかに?(読んで知るべし)

    前巻の感想で「各エピソードがなにげに伏線として機能している」と書いたように、この巻もそれぞれのキャラの過去を背景に「母と子」エピソードが語られていて、効果的にまとまっていた。橘高の舎弟・安部が過去に起こした事故によって母親からの愛情を得られず、幼少時代につらい思いをした祐。実母が母である前に女だったことで本来与えられるべき愛情が与えられず、さらにヒモ男から虐待を受けていた清和。生後まもなく捨てられたことで実母を知らず、養子となっても義母から冷たい仕打ちを受け、耐え続けた氷川。母に対する想いはそれぞれあるだろうが、語られるだけで登場はしない彼らの母たちは、どんな思いをわが子に抱いていたのだろう?…それは読み手のイマジネーション次第で…という展開になるのだが、女優になりたい一心から家庭を顧みない柚子とその息子・健太のエピソードが出てきたことによって、さらにいろんな思いが交錯してしまった。氷川と祐は柚子と健太をどう見たのか。そして健太が成長したとき、自分の母をどう想うのか。

    成長した清和は、実母・園子をどう思っているのか?――宿敵・藤堂が仕掛けた園子に関するワナによって、清和は組長の顔を忘れるほどのダメージを受けてしまう。最大のポイントは、藤堂と直接対決をしたのが清和ではなく氷川だったこと、そして氷川しか知らない真実によって勝利を得たこと。「清和付き舎弟でもできないこと=氷川にしかできないこと」なのである。眞鍋組の二代目姐はなにをしでかすかわからない核弾頭だが、実は眞鍋最強の切り札でもある。

    個性派な舎弟が揃った眞鍋組、会心の一撃を藤堂に食らわした氷川。藤堂は果たしてどう出てくる?『龍の灼熱、Dr.の情愛』に続く。

    @RECOMMEND@
    評価:★★★★★(清和くんの素顔を垣間見られて、実は超嬉しかったり♪)
    見事勝利したのちに迎えるラストのラブシーンはごく自然な展開で、よくある「ラストにもう一回」的な描写ではなく、とてもしっとりとした場面になっていた。そーゆー感じ、大好きだー!

    ZERO STARS … 論外/問題外作
    ★ … お好きな人はどうぞ。
    ★★ … つまらない。
    ★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
    ★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
    ★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。

    「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
    「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
    性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。

    *2009年9月10日に書いた感想を大幅改稿
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    樹生かなめ 『龍の純情、Dr.の情熱』 講談社 2006年 … 虎の過去と晴信登場

    龍の純情、Dr.の情熱 (講談社X文庫 ホワイトハート)龍の純情、Dr.の情熱 (講談社X文庫 ホワイトハート)
    (2006/02/02)
    樹生 かなめ (挿絵:奈良 千春)

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    清和の右腕「眞鍋の虎」ことリキの意外な素性が判明し、ヤクザになってしまった弟をどうしても諦めきれないリキ兄・晴臣が登場。氷川ひとりだけでも大変なのに晴信にまで振り回される眞鍋組の面々のドタバタと、リキ兄弟に清和と自分をオーバーラップさせてしまう氷川の複雑な心境などを描いた作品。

    眞鍋組のお家騒動とチャイニーズマフィアとの抗争が終結したことで、この巻からようやく新生眞鍋組率いる清和と二代目姐・氷川の「かかあ天下」ラブがスタートし、舎弟たちを巻き込んだ騒動がメインストーリーになりますよ、いよいよ新章がスタートしますよ、となった印象を受ける。WH版の「龍&Dr.」シリーズは、この巻から始まるような気がする。

    誰よりも清和と一緒にいる時間が多い参謀のリキだが、物語の主人公が氷川なゆえに組の内情があまり描かれていないため、読み手には参謀と云うより清和のガードという印象が強い。そもそもなぜ彼は清和付き舎弟になったのか?…という話が語られていくのだが、リキをなんとしてでも連れて帰りたい兄・晴信がかなりのクセ者で、出てくるたびに強烈な印象を残していく。氷川は氷川で「清和愛し」から眞鍋組に何度も乗り込んだ過去を持つこと、ヤクザを辞めさせたいとまだ思っていること、そしてもともと性格的に優しいことから、どんなに晴臣がしつこくリキを追ってきても強く拒否できない。世の兄たちが晴信ほど弟愛しな気持ちを持っているかは怪しいが、このあたりの心理描写はかなめさんらしい強調とデフォルメなので、そのまま晴信のしつこさを楽しめばよいと思う。

    この巻読んでいて上手いと思ったのは、各エピソードがなにげに伏線として機能していること。ダイアローグを通してサラリと触れられているので、あからさまな伏線とは感じないところが素晴らしい。「あの話があったから、この話が効果的なんだ」と後で気付く。たとえば、女連れ込んだ患者を強制退院させてウンザリした氷川が、今度は第三ビル十階にある病室で女の子に片っ端から手をつけ「退院させろ」とわめいているショウに遭遇する。読み手は「ここでもか」と氷川に共感するだろう。幼い清和の飢えを癒すために母乳の出る女の子になりたいと思った15歳の氷川の話では、その前に母乳について勘違いしていた医者たちの話が語られている。同じ勘違いの話でも、医者たちの話があったからこそ氷川の過去は笑い話ではなく切ない話として印象付く。どれもがサラリと語られているので、嫌味に感じられない。

    リキの話の過去、重傷を負ったのにヤンチャぶりを発揮するショウ、なんとしてでも京介を舎弟にしたい清和、ますます「かかあ天下」になっていく氷川、振り回される舎弟たちと眞鍋組の現状を描きつつ――そのままストーリーは、『龍の恋情、Dr.の慕情』へと続く。

    評価:★★★☆(清和くん、いったいどれだけ車を持っているの?)
    ひとりで堂々とゴムを購入している氷川を見た清和くんが、「次からは誰かに買ってこさせるから、先生は買わなくていい」と云ってたけど(氷川はそれを拒否)…誰に買わすつもりだったの?>清和くん…たしか橘高パパにもらったことあるし、前巻ではリキに買わせようとしていたよね?清和くん、過去に一度も自分で買ったことないでしょう?そりゃ清和くんに命じられたらリキは買うだろうけど…どこで?コンビニやドラッグストア?通販って手もあるか…って、リキが通販?…ありえない。いくらキャラのギャップがシリーズの魅力のひとつでも、こればっかりはさすがにないだろうなあ。となると、信司?花柄だったり、ピンクだったり、レース付きだったりするのを選びそう。しまった、アタシってばゴムひとつでなにいろいろと真剣に考えてるんだろう…。

    ZERO STARS … 論外/問題外作
    ★ … お好きな人はどうぞ。
    ★★ … つまらない。
    ★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
    ★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
    ★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。

    「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
    「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
    性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。

    *2009年9月3日に書いた感想を大幅改稿
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    樹生かなめ 『龍の恋、Dr.の愛』 講談社 2005年 … 眞鍋第三ビルは最強

    龍の恋、Dr.の愛 (講談社X文庫 ホワイトハート)龍の恋、Dr.の愛 (講談社X文庫 ホワイトハート)
    (2005/02/05)
    樹生 かなめ (挿絵:奈良 千春)

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    若い清和が二代目組長を就任したことで不協和音が生じた眞鍋組だったが、反目していた幹部が相次いで亡くなり、また橘高家で手打ちが行われたことによってお家騒動は一旦沈静化。氷川は清和と眞鍋第三ビル最上階で暮らし始める。平穏な日々が続く中、真鍋組を解散させてヤクザを辞めさせたい氷川と新しい眞鍋組を作りたい清和の前に、再び反眞鍋勢力が台頭し眞鍋組を陥れようと画策していた。氷川と清和、そして眞鍋組の大ピンチ。さてどう切り抜ける?…シャレード文庫『DRは龍に乗る』『DRは龍と立つ』の続編が講談社WHから発売。

    BL界では他に例を見ない受と攻の力関係、そんなふたりによる「……」「おいで」「いいのか?」「いいから」といった始まり方をする独特なラブシーン、長々と続く不条理感に満ちた人間観察的ダイアローグ――「樹生かなめ」の作風を知らないと、数ページで撃沈させられ白旗を揚げてしまうかもしれないシリーズであり、実は私も過去に白旗を揚げそうになったひとりである。そんな私が白旗を降ろして大漁旗を挙げることになったのは、実はもうちょっと巻が進んでからだったが、いま読むとこの1巻(実質3巻)はけっこう面白い。

    氷川と清和くんの日常が平穏に過ぎていく日々――だがそれは仮初め。反清和勢力残党がチャイニーズと組み、眞鍋組との抗争を始める。眞鍋第三ビルは戦場と化し、眞鍋組構成員に死者が多数出てしまう。さらにビル内に仕掛けられたダイナマイトが次々と爆発、どっかーん!どっかーん! でも1本や2本ぐらいなら眞鍋第三ビルは平気、外部に音は漏れません…って、いったいどんなビルなんですか?

    そういえば1巻でショウが「このビルの防御システムは最高です」と云っていた。そのときは「なにゆえ防御?防犯ではなく?」とギモンに思ったのだが、ダイナマイト爆発しても外観に影響ないのだから、ショウが云っていたことは正しい。第三ビルは最強の要塞ビル、このビルと氷川がある限り、眞鍋組の天下は続くとみた。

    反清和勢力の残党+チャイニーズに対して眞鍋組がどんな手を投じて勝ったのかは、氷川視点なのであまり語られていない。表向きとは別のことが裏では起きていたはず。だが清和は氷川に知られたくない。私が清和でも同じ思いを持つだろう。

    いい友だちだと思っていた学生時代の友人に金で簡単に裏切られてしまった氷川と、ヤクザでも幼い頃からの友だちであるショウを大切するホスト京介――その苦い対比にいつものかなめ節を感じながら、ようやくお家騒動は終結する。今回の抗争によって清和は闇社会に最強の顔を売り、ストーリーは清和率いる新生眞鍋組とぶっ飛び姐さん・氷川をフィーチャーしていく『龍の純情、Dr.の情熱』へと続く。

    評価:★★★☆(13年前のクリスマスの話が切ない)
    最初のんびりと始まったのにチャイニーズとの抗争シーンに入るや、目が覚めるかのような速度と勢いでストーリーが動いていった。ドンパチ抗争が逃げずに描かれてあったことのほか、そんな臨場感に溢れた中で氷川が見せた医師としての確固たる信念にも感動した…けど、全体を通してみればやっぱり不思議なバランスの上に成り立つ作品だったなあ。

    ZERO STARS … 論外/問題外作
    ★ … お好きな人はどうぞ。
    ★★ … つまらない。
    ★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
    ★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
    ★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。

    「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
    「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
    性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。

    *2009年9月2日に書いた感想を大幅改稿しました

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    プロフィール

    秋林 瑞佳

    Author:秋林 瑞佳
    「あきりん・みずか」と読みます。
    (BLCD感想はジョセフィーヌ秋太夫が担当)

    風来のネットサーファーにして、
    ハンパない映画ギーク。
    そしてなにかと悩める電脳仔羊。

    気の向くまま、
    ネット場末で人知れず更新中の、
    BL感想&レビューブログです。

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